ところで,励起状態に上げるために必要な光の波長が,703 nmと800 nmであることで,かつてはポンピング用にはフラッシュランプが用いられてきましたが,この場合はランプの出力のほとんどが温度を上げることに使われてしまい,肝心のポンピングに使われるのはランプ出力のほんの一部です。
そこで,最近ではこの吸収波長に合致するGaA1As半導体レーザーが使われています。半導体レーザーでポンピングした場合,ポンピング光の大部分が励起に使われて,レーザー材料の温度を上げることがありません。そのために高繰り返し動作が可能となります。
半導体レーザーは,電気エネルギーから光エネルギーに変換する装置としては極めて効率の高い装置です。市販されているものでも10%以上,実験室段階では50%の電気-光変換効率を得ることが可能な,極めて優秀なデバイスです。
GaAlAs半導体レーザーは,半導体レーザーの中でも,ネオジウムの800 nm付近の強い吸収ピークに一致する,750-900 nmの近赤外波長域において最も高いパワーを出すことができるデバイスです。
さらに,半導体レーザーでポンピングした場合,レーザー結晶を余分に加熱することがありませんので,小型で高効率の固体レーザーが実現できることになります。個々の半導体レーザーが生み出すことのできるパワーはしれていますので多数の半導体レーザーを並べた構造のアレイレーザーが使われることもあります。多数の半導体レーザーでポンピングする様子を図2に描いています。