【本連載執を筆者された黒澤宏氏は2019年4月15日に逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。】
レーザーは誘導放出によって発生した光をさらに強める必要があります。そこで,多くのレーザーにおいては,2枚の反射鏡でできた光の共振器の中に光の増幅を担うレーザー媒質を配置してあります。
レーザーの共振器は両端に精度の良い反射鏡を配置して,誘導による放出光を再び媒質の中に戻す構造となっています。つまり,自らの光で再び同類の光を呼び出して,増幅を重ねるという手法をとっているのです。
反射鏡は,我々が一般に使っているような鏡ではとても役にたたず,レーザー発振は行えません。その理由は,鏡面での損失が大きいからです。共振器を構成する反射鏡は,反射率を理想的な値にまで上げてこれを両端に設置し,光を往復させても光が拡がらず両端で光を閉じこめる条件を整えることが必要です。
反射鏡は,光学ガラスを高度に研磨し,その上にレーザー波長の1/4の厚さに酸化セシウムなどの誘電体を交互に多層膜として蒸着したものが用いられます。(レーザー光学部品では,この1/4波長をよく用います。その理由は,希望する波長を取り出す必要上,その部品面での損失を低く押さえるために干渉を利用するからです。1/4波長は,入射と反射で1/2波長分になり位相が反転して弱められるのです。)