20世紀のハイテク時代は集積回路とコンビュータが作ってきましたが,これらの中で働いているのは「電子(エレクトロン)」です。電子は原子の中に閉じ込められている極めて小さな粒子です。
「…子」は,極微粒子の代名詞ですが,電子はそれのご先祖様です。電子の大活躍する現代の人間は,電子の森の住人であると言えるでしょう。電子が原子から解き放たれて自由になったとき,動き回って仕事をします。時には熱になり,時には電気を起こし,そして時には情報を伝えます。電子は動くことでエネルギーを伝達し,仕事をします。
しかしながら,電子は小きすぎて,沢山の電子が集まらないと仕事になりません。例えば,100 Wの電球を点灯させるには1秒間に10・・・・00(0が18)個の電子が必要です。こんなにたくさんの電子が電球の中を走って,やっと100 Wの明るさを出すことができます。
携帯電話では,音声や映像を「電子の働き」に乗せてアンテナから「電波」として発信します。相手方の携帯電話では,アンテナで電波を受けて,電子の動きに変え,スピーカーや画面に映し出します。このためには,受信した信号を運ぶ電子の数を多くする,すなわち信号の振幅を大きくする必要があります。携帯電話の中にはこの増幅の働きをする増幅器が入っています。
光の世界でこの増幅器と同じ働きをするものが「レーザー」です。増幅だけでなく,光を作り出す,すなわち発振器もレーザーと呼んでいます。光の速度は1秒間に地球を7周半するほど速いので,送り手側の情報が,ほぼ同時に相手方で見たり聞いたりできるわけです。
電波は,中学校で習う正弦波の形をしており,理論(計算)通りに,取り扱うことができますが,もし光が電波と同じ仲間で,正弦波ですと,電波と同じことを光でもできることになります。一般の光は電波とは異なる波ですが,レーザーはまさに電波と同じ形の波であると言えるでしょう。レーザーは,電波でできることを光の世界で実現することが最初の目標でしたが,最近のレーザーの進歩を見ると,電波ではできないことまでやってのけようとしています。
最初の3回は,レーザーについてざっと見て行きます。その後で,こんなに魅力たっぷりのレーザーについて,詳しくお話しする予定です。