(競合技術の評価は難しい)
よく指摘されることですが,社内で技術評価している場合,競合技術についての評価が甘くなることがあります。自社の開発対象は計画通りに進歩し,一方,競合技術は既存の水準のまま推移するといった思いになりがちなためです。
自然なことかもしれません。自社の開発課題は良く見えますが,他社の開発活動は見えません。よく見える自社の開発課題はリアルタイムで進歩しますが,見え難い他社の競合技術の進歩状況は見ないままとなっても不思議はありません。
加えて難しいのは,競合している技術が同じ技術分野というか同じ種類の技術でないこともあることです。同じ分野の中で技術同士を比較することはできても,分野を異にする技術の比較は困難です。
とにかく,他社が開発し,かつ,自社保有の技術とは領域が異なる技術となると,ますます,見え難くなり,例えば,その技術の進歩についての判断が甘くなりますし,競合関係の把握も甘くなります。
(目的を共有する)
ところで,大学で行われている研究開発にしても,企業が行っている技術開発にしても,目的が無いということはありません。目的があるなら,その目的を共有する技術があるはずです。
ある目的を達成する可能性のある技術がただ一つしか考えられないにしても,その技術を実用するとき共に使われる技術は目的を共有する技術です。一方,その目的を達成する可能性のある他の技術がある場合も,その技術は目的を共有する技術です。
目的を共有する技術は,共に実用される場合は協調的,補完的な関係にある技術ということになります。また,目的を共有しながら相互に代替可能性がある場合,それらの技術は競合的,代替的な関係にあることになります。
(目的が変わると関係も変わる)
この協調的・補完的,あるいは競合的・代替的という技術間の関係は,技術自体に定まっているわけではありません。目的が変われば関係も変わります。二つの技術の関係が協調的になるか競合的になるかは目的によって変わります。
例えば,光ファイバーを用いた光通信システムでは,光ファイバーと半導体レーザは協調的・補完的な関係にあります。しかし,光通信システムでも有線対無線という構図がでてくると競合関係になります。