量子コンピューターの実現に向け,IBMやGoogle などのビッグテックが注目を集めている。一方,これらの企業が開発を進める超電導方式には無い特性を武器に待ったをかけるのが,光方式による量子コンピューターを開発するOptQCだ。開発においては少数派だという光量子コンピューターに勝機はあるのか。同社の若きCEOである高瀬寛氏にその展望を聞いた。

どうせやるなら社長が面白い
―OptQCについて教えてください
昨年9 月2日に設立したばかりの会社で, 社名はOptical Quantum Computer,光量子コンピューターから取りました。世の中にはソフトウェア,つまり量子コンピューターができたら何をしましょうという会社が多い中,我々は実機を作る技術を持つ点で競争力があると考えています。
我々はスタートアップですが,25年にわたる研究で光量子コンピューターという分野を確立したとも言える東大古澤研(東京大学 古澤明研究室)の技術を継承しています。古澤研では国が進める「ムーンショット型研究開発事業」によって,ここ数年はこれまでにないペースで研究成果が出ており,基礎研究だけではなく,社会実装に向けても活動していきたいという思いからOptQCを設立しました。
―社長になった経緯を教えてください
会社を創る決断をしたのは古澤先生ですが,誰が社長をやるんだとなった時,活きのいいのがうちのラボにいるぞと(笑),助教だった私が社長,同じく助教だったアサバナント・ワリットさんが技術責任者として指名を受けました。
どうせスタートアップに行くなら経営側の方が絶対に面白いので,これはチャンスだと思いました。組織を一から作っていくのもやりがいがあるでしょうし,ましてや社長をやる機会なんてそうないですから「やります」と即答しました(笑)。
―実際に社長となっていかがですか?
スタートアップが一番苦労するのはお金を集めるところですが,古澤研は圧倒的に知名度があるのでVCからの注目度が高く,年明け早々に資金調達できる予定です。他にも国プロがあり,当面の事業資金は問題ありません。
経営の難しいところは,あらゆる選択肢があるところだと思います。何をやってもいい一方で結果も跳ね返ってきますが,これは研究も同じです。レールがないから不安,みたいなことはありません。