神大ら,蛍光で早期がんの超高感度検出に成功

神戸大学とシステム・インスツルメンツは,がんの新たなバイオマーカーとして注目されているエクソソームの超高感度検出法を開発した(ニュースリリース)。

エクソソームは,さまざまな細胞から放出される脂質二重膜を有する100nm程度の小胞。最近がん細胞から放出されるエクソソームが,がんの悪性化や転移に深く関わっていることが明らかとなり,このエクソソームを追跡し,がんの早期発見をする試みが,新たながん検出法として注目を集めている。

現状のエクソソーム分析法は,超遠心やアフィニティー分離などを併用して行なわれるため,手順が煩雑で,簡便で迅速とは言えない。体液中のがん細胞由来のエクソソームを正常エクソソームと識別することができれば,簡単な体液検査でがんの早期発見が可能となる。

今回,研究グループは,鋳型重合法の一つである分子インプリンティング技術を応用し,エクソソームを固定化したガラスチップ上に30nm程度の人工高分子薄膜を形成後,エクソソームを取り除くことにより,エクソソームのサイズに近い空間(エクソソーム補足空間)をガラス基板上に形成した。

さらに研究グループが開発したポストインプリンティング修飾技術を用い,そのエクソソーム補足空間内のみに,エクソソーム表面の膜タンパク質を認識する抗体と,エクソソームの結合情報を蛍光変化で読み出すことのできる蛍光分子を選択的に導入し,エクソソームセンシングチップを得た。このセンシングチップは,エクソソーム上の膜タンパク質を認識してエクソソームを捕捉し,その捕捉情報を蛍光変化で読み出す。

研究グループは,この蛍光センシングチップによるエクソソームの測定を簡便に実行するため,すべての分析作業を自動化したエクソソーム自動分析計の製作した。これは3Dロボットアームを搭載した自動分注装置に高感度CMOSカメラ搭載蛍光顕微鏡ユニットを装着したもので,エクソソームセンシングチップを挿入した特注の扁平型ピペットチップを用いて,試料の吸引・吐出・基板の洗浄を自動的に行なう。

このエクソソーム自動分析計により,前処理なし10分以内で,1mlあたり6pgという従来にはない高い検出限界を達成した。これは,10μl中に約150個のエクソソームがあれば検出可能ということになり,従来報告されている測定法の感度を大幅に上回る超高感度なエクソソーム検出が可能という。

研究グループは,今後がん由来エクソソームの分析が,がん診断に有用であることが実証されれば,その簡便性からがん検診受診率の向上に貢献し,国民の健康に大きく貢献できるとしている。

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