神戸大学,早稲田大学,大阪大学は,マウスを用いた実験により,テラヘルツ波を利用して,音をつかさどる耳の器官である「内耳蝸牛」のマイクロメートルスケールの小さな内部構造を3次元で非破壊観察することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
感音難聴の多くは,耳の奥にある音をつかさどる器官である「内耳蝸牛」の障害が原因とされているが,蝸牛は頭蓋骨深部で骨に囲まれているため,光では骨を透過できず,X線では照射臓器に被ばくのリスクがあり,従来の手法では安全に内部を観察することが困難だった。
また,テラへルツ波は非破壊での計測ができるが,従来のテラへルツ波での観察では,テラへルツ波をレンズで絞って観察対象に照射させていたため,照射スポットサイズ(数ミリメートル~数センチメートル)より小さな対象物質は,いわゆる回折限界の影響で観察が困難だった。
研究グループは今回,光-テラへルツ波変換で生成する微小なテラへルツ波の光源を利用することで,高い解像度で耳の奥にある音をつかさどる器官,蝸牛内部観察を実現した。
非線形光学結晶にフェムト秒パルスレーザー光を照射する時,テラヘルツ波が局所的に発生することに着目した。ここで発生するテラヘルツ波は,マイクロメートルスケールのスポットサイズであり,その波長より数十〜数百分の1ほど小さい点光源として扱うことができる。
この小さなテラへルツ波の点光源を,サンプルと直接相互作用させてイメージングを行なうことで,これまで難しかった内耳蝸牛の非破壊での内部構造観察に初めて成功した。3次元観察を実現するために,この手法と,蝸牛内部から反射してくるテラへルツ波を使ってイメージングするTime of flight(ToF)という技術を組み合わせた計測法を提案した。
さらに機械学習を活用した画像解析法を導入することで,蝸牛内部構造の3次元観察と断面観察をマイクロメートルスケールで実現した。
研究グループは,この技術は,感音難聴をはじめとする耳疾患の診断や,生体内でのオンサイト診断に貢献でき,テラヘルツ波を活用した新しい内視鏡や耳鏡などの医用デバイス開発も期待できるとしている。