京大ら,変換効率約30倍のCO2還元光触媒を開発 

京都大学と住友金属鉱山は,二酸化炭素を従来比率約30倍の変換効率で一酸化炭素へ還元する紫外光応答型光触媒を開発した(ニュースリリース)。 

光触媒反応による二酸化炭素還元技術は,光エネルギーを利用した光触媒反応により,CO2をプラスチック等の原料となる一酸化炭素等の工業的に有用な化学物質へ変換する技術であり,人工光合成と呼ばれている。

この技術は,CO2排出量の削減に留まらず,CO2の再資源化によって化石燃料への依存からの脱却を図り,2050年カーボンニュートラル社会の実現に大きく貢献することが期待されている。しかし,CO2は化学的に安定な分子であり,CO2還元は起こりにくい反応であることが知られている。

京都大学では,15年にわたってCO2還元に活性を示す半導体光触媒開発に取り組んできた。これまでに報告した光触媒材料群のうち,タンタル酸亜鉛にAg助触媒を担持したAg/ZnTa2O6は,紫外光照射下でCO2を選択的にCOへ還元できることがわかっていたが,CO2光還元により得られるCO濃度は270ppm程度に留まっていた。

この研究では,住友金属鉱山独自のAg助触媒担持技術である超音波還元法を用いてAg助触媒をZnTa2O6に担持させ,さらにそのAg助触媒にCr化合物をコーティングする手法を確立した。これにより,CO2光還元で得られるCO濃度を従来に比べ一桁高い8,000ppmの水準に向上させることに成功したという。この水準のCO濃度は,国内外の報告例と比較して非常に高い値であり,世界トップクラスとしている。 

研究グループの技術を融合させたこの手法の確立は,2050年カーボンニュートラルの実現への大きな1歩であるとしており,今後は,半導体光触媒の開発にも注力する必要があると考えているという。今回用いたZnTa2O6光触媒は,300nmよりも短波長の紫外光しか利用できないが,太陽光に多く含まれる可視光を利用できる光触媒であればCO2還元性能のさらなる向上が期待できるとしている。

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