愛媛大ら,金ナノ粒子上のDNA構造と密度の影響解明

愛媛大学と理化学研究所は,表面にDNAを修飾した金ナノ粒子を用いた標的DNA検出における,DNAの高次構造および密度の影響を明らかにした(ニュースリリース)。

直径が数~数十nmの金ナノ粒子の水溶液は,分散状態では赤色を呈すが凝集状態では青紫色へと変色する。この特性を利用して,標的分子の存在下においてのみ金ナノ粒子の凝集体を形成させることにより,様々な分子の比色検出が行なわれてきた。

特に,1本鎖DNAを修飾した金ナノ粒子を用いたDNA検出は,標的特異性・迅速性に優れるため様々な遺伝子診断に利用されている。

研究グループは,これまでに,凍結法及びEthylene glycol(EG)を用いることにより,金ナノ粒子表面に修飾されたDNAの密度を制御する方法を確立した。また,金ナノ粒子の非架橋型凝集を用いた標的DNA検出において,修飾DNA密度が低い金ナノ粒子ほど,より高感度に標的DNAを検出できることを明らかにした。

しかしながら,検出対象のDNAには様々な配列や構造が存在し,修飾条件の指標を立てる上では,高次構造などの影響を明らかにする必要があった。そこで研究グループは,高次構造をとりやすいと考えられる配列を有するDNAを修飾した金ナノ粒子(ssDNA-AuNP)の標的DNA検出感度に対する修飾DNA密度の影響を評価した。

まず,2種類の1本鎖DNA,一つは立体構造をとりにくいDNA(type-1),もう一つはステムループ構造を取りやすいDNA(type-2)を用いて,金ナノ粒子上の修飾密度制御を実施した。

ssDNA-AuNPを用いた標的DNAの検出感度に及ぼす修飾DNA密度の影響を評価したところ,type-1の標的DNAの検出感度は固定化DNA密度が低いほど向上した。それに対して,立体構造をとりやすいtype-2の検出感度は固定化DNA密度が高いほど向上した。

その原因を明らかにするため,修飾DNA密度の違いがssDNA-AuNPsの二本鎖形成率に与える影響を調べた。その結果,type-2ではtype-1よりも二本鎖形成率が低く,特に低密度条件下では,二本鎖形成率は有意に低下することが分かった。

これは,低密度化によりtype-2上ssDNAのステムループ構造の形成が促進されたため,低密度条件におけるstem-loopの二本鎖形成効率が減少したたと考えられるためだという。

研究グループは,今回の結果により,金ナノ粒子を用いた遺伝子診断において,様々なターゲットDNAにおける高感度化が期待されるとしている。

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