島津製作所は2月19日,高速度ビデオカメラの新製品「HyperVision HPV-X3」についてメディア向けに発表を行なった(ニュースリリース)。
新製品はセンサと電気系を一新。従来機種「HyperVision HPV-X2」と比較して撮影速度が2倍の2,000万コマ/秒に,画素数は3倍の30万画素になっているという。また,センサにメモリ機能を持たせることにより全撮影速度と解像度で256枚の撮影が可能とのこと。レンズマウントはニコンのFマウント。
搭載されている高速CMOSイメージセンサ「FTCMOS3」は,東北大学と共同で開発したもの。このセンサの開発により両者は大学や研究機関などの独創的な研究成果を実用化した優れた研究開発(技術)について研究者および企業を表彰する「井上春成賞」を2022年に受賞している。これにより,最高撮影速度が従来機種の1,000万コマ/秒から2,000万コマ/秒に向上。このクラスの高速度ビデオカメラでは世界最高水準だという。
さらに,画素数を30万画素に向上させたことで細部の観察と広い視野の両立を達成し,最高撮影速度でも解像度が低下しないとしている。高解像度化により,デジタル画像相関(DIC)解析の精度も向上し,特に材料開発分野において,より詳細な歪み解析や変形挙動の分析が可能となったとのこと。さらに,微小爆薬の衝撃波解析では,爆破片が超音速で飛行し減速する過程を明瞭に捉えることができるという。
また,「フレーム同期機能」を新たに導入し,放射光施設など周期的に発光する光源と同期した撮影ができるようになった。これにより,ヒューズ破断の高速X線透過撮影など,特定のタイミングでの撮影が必要な解析にも対応する。
高速度ビデオカメラは,材料開発や航空宇宙,医療など幅広い分野で活用されている。材料開発分野では高速衝撃試験や放射光を用いた解析,航空宇宙分野では衝撃波や放電現象の観察,医療分野では生体を伝播する衝撃波や微細気泡の挙動観察に利用される。この製品はこれらの分野において,より詳細な分析を可能にするものと期待される。
希望販売価格は4,477万円(税込)から。大学や国立研究機関などを主な対象に,2025年度に国内外合わせて40台を発売することを目標にしているとのこと。
<カメラ本体の仕様>
レンズマウント | ニコンFマウント |
撮像素子 | FTCMOS3 イメージセンサ(約30x23mm) |
ピクセルサイズ | 48 μm x 48μm |
撮影速度 (フレームレート) | 2,000万コマ/秒 1,000 万コマ/秒~ 60 コマ/秒は撮影速度可変(1 / (5ns) 単位) |
記録枚数 | 256枚 |
解像度 | 30 万画素(628( 水平)×480( 垂直)) |
色表現・階調 | モノクロ・10 ビット |
露光時間 | 2,000 万コマ/秒は約25ns 固定 1,000 万コマ/秒~ 60 コマ/秒は、最小50ns から5ns 単位で可変 |