東北大学,理化学研究所,産業技術総合研究所,東京大学は,有機半導体や薬剤など有機物質の微細構造を同定する解析法を開発した(ニュースリリース)。
有機半導体は,柔軟性,低エネルギーで合成や加工ができる環境への優しさといった利点をもち,次世代の電子デバイスの材料として有望視されている。これらの材料は,フレキシブル・ディスプレーや高効率太陽電池からウェアラブル・エレクトロニクスに至るデバイスを実現し,暮らしや社会をより良いものに変革する可能性を秘めている。
その有機半導体の分子構造を解明する強力な解析手法である従来のX線結晶構造解析法は,10μm以上の大きさの整然とした結晶を必要とするが,多くの有機半導体はこれより小さい結晶や薄膜しか形成しないため,既存の手法では解析が困難だった。
さらに,有機半導体の中には,多形(同じ分子が異なる結晶系を示す結晶多形,および結晶内で異なる形状をとるコンフォメーション多形)と呼ばれる複雑な挙動を示すものが知られていたが,解析例が極めて少なく,その詳細は不明のままだった。
微細ではあるが機能・特性に大きく関わるコンフォメーション多形を理解することは,有機材料の特性を予測し制御するために不可欠。そのため,既存の解析法の限界を超える,新たな構造解析法の開発が望まれていた。
今回研究グループは,最先端の3次元電子回折法と開発した構造決定法を組み合わせて,従来の手法では解析できない複雑な分子構造をもつ有機半導体微小結晶(厚さ数百nm以下)の構造解析に成功した。この新しい技術により,有機半導体結晶中で分子がどのように配列しているのか,その複雑な構造の詳細が明らかになった。さらに,同じ化学構造をもつ分子が結晶内で異なる形状をとる現象を明らかにした。
今回開発した構造解析技術は,さまざまな有機材料・薬剤の開発に新たな可能性を開く技術基盤を提供するもの。解析困難な材料の詳細な構造情報を提供することで,有機半導体の設計,開発を加速することが期待される。研究グループは,より効率の高い太陽電池や,より性能の高いフレキシブル・ディスプレー,新しい電子デバイスが生まれる可能性があるとしている。