東北大学,産業技術総合研究所,関東化学は,表面が粗いAuめっき膜を平滑なAu薄膜に重ねる付加的な平滑化手法を新たに開発した(ニュースリリース)。
次世代小型電子デバイスの実装工程には,熱によるダメージや残留応力を避けるため,低温での接合技術が求められる。Auめっき膜を介した接合は,電気的接続や封止などに広く用いられているが,素子への負荷を軽減するために,接合プロセスの温度を可能な限り低く抑える必要がある。
しかし,一般に,接合面の平滑度が低いと隙間が生じやすくなり,密着性を上げるためには,より高い温度や圧力が必要となり,矛盾が生じてしまう。
接合プロセス温度を低下させるには,接合面の平滑化技術が不可欠。特に,熱に極めて弱い材料や熱膨張係数差の大きな組合せの用途においては,接合温度を常温レベルまで下げる必要があり,その実現には原子レベルで平滑な接合面が求められる。
接合面の平滑化には従来技術として,除去加工である研磨が用いられてきたが,小さな面や複雑な形状を平滑化するのが難しいという課題があった。
研究グループは,表面活性化に基づくAuの常温接合技術に取り組んできた。この研究では,表面活性化接合とテンプレートストリッピング技術を組み合わせ,粗いAuめっき膜に平滑なAu薄膜を転写し,付加加工によって平滑化する新たな技術を開発した。
これは,表面活性化接合によって,別途テンプレート上に形成したAu薄膜を粗いAuめっき膜に転写する技術。これにより,もともと粗かったAuめっき膜の表面に,Au薄膜を繰り返し転写することで,表面が平滑化できることがわかった。
これは,ポリイミド製テンプレートのナノレベルの変形とAuの原子拡散により,Auめっき膜の凹凸が吸収されるため。十分に平滑化されたAuめっき膜は,熱を加えなくとも常温で強固な接合を達成できることを実証した。
また,平滑化したAuめっき膜にシリコン(Si)チップを常温接合した試料のせん断強度測定試験では,転写したAu薄膜から破断するわけではなくSiチップが先に破壊されてしまうほど強固に常温接合されていることがわかった。
これは,研磨などの除去加工を用いず,付加加工に基づく新たな平滑化技術を開発した成果。研究グループは,電子デバイスの製造プロセスに広く用いられるAuめっき膜の平滑化とその常温接合の応用を示したことで,将来の電子実装技術の発展に資するものだとしている。
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