東京大学の研究グループは,雲と降水を観測する複数の人工衛星を組み合わせて,水と氷が混ざった雲で水滴がどのように成長して降水となるのかを解析し,雲に含まれる氷の割合が高いほど降水が起こりやすいことを初めて地球全体の規模で示した(ニュースリリース)。
雲から生じる降水は,大気から地表へと水を運ぶことで人間生活に欠かせない淡水を供給するほか,大気中に雲として浮かぶ水の存在量を左右して太陽からの光エネルギーや地球自身が放出する赤外線エネルギーの流れに影響している。
これらのはたらきは気候状態の形成や変動に深く関わるため,雲からどのように降水が生じるのかを理解することは科学的・社会的に重要な意味を持つ。
この問題を地球全体の規模で調べるには人工衛星による観測データを解析することが有効だが,近年では雲と降水の異なる側面を捉える様々なセンサを搭載した複数の人工衛星が地球を周回しており,中でも米国航空宇宙局(NASA)の複数の地球観測衛星が形成するA-Train衛星群と呼ばれる人工衛星の隊列が同じ雲・降水をほぼ同時刻に観測することを実現してきた。
このような複数の衛星観測データを組み合わせることで雲の粒子がどのように成長して降水が起こるのかを調べる研究が近年行なわれてきたが,それらは液体の水のみを含む雲に限定されており,より一般的な水と氷が混ざった雲で水滴がどのように成長して降水が作られるのかを人工衛星の観測データから直接的に調べた研究はなかった。
研究グループは,水雲から雨が降る様子をA-Train衛星群の観測データを用いて解析した先行研究の手法を水と氷の両方を含む雲へと拡張し,雲に含まれる水と氷の組成や雲粒子の大きさによって降水の起こり方がどのように異なるのかを地球全体の規模で調べた。
このために,先行研究では用いられていなかった雲の熱力学的相に関する情報を研究グループが独自に開発した手法で衛星観測から導出し,それを別の衛星から得られる雲内部の鉛直構造に関する観測データと組み合わせて解析した。
その結果,氷の割合が低い雲では雲粒子が大きいほど降水が起こりやすく,雲に含まれる氷の割合が高くなるほど雲粒子の大きさには無関係に降水が起こりやすいことが地球全体の統計として明らかになった。
研究グループは,この知見は気候変動に伴って雲と降水がどのように変化していくのかを予測するための新たな手がかりを与えるとしている。