横浜国立大学とLQUOMは,量子通信長距離化に必須の量子中継による量子もつれ生成の高レート化を可能にする手法を発明した(ニュースリリース)。
量子インターネットと呼ばれる地球規模の量子通信ネットワークでは,様々な量子デバイスが結ばれることにより,次世代の情報通信技術の基盤となる期待されている。量子インターネットは,量子状態を送信するインフラという事ができる。そのための基礎が量子もつれの共有能力となる。
数100kmを超える光ファイバネットワークを用いた量子通信によって,この量子もつれ共有の長距離化実装が待望されているが,長距離化には量子中継と呼ばれる技術が必要になる。量子中継は,遠方ノードにある量子メモリ間に量子もつれを共有する手法。
これまでに,さまざまな量子中継の手法が提案され,実験的な実証も少しずつでてきている。その中でも,ある区間を結ぶ両端の量子メモリからの計1光子のみを共有する量子もつれは,量子中継の実装方法としてその高効率性から有望な方法となる。
しかし,光路や遠隔地のレーザー位相を精密に制御する必要があり,特に遠隔地間での適用には課題があった。そこで研究グループは,多重化技術を活用することで,従来の効率を維持しつつ,位相制御の難易度を大幅に緩和する新しい手法を提案した。
今回,研究グループは一光子干渉を用いた新しい量子中継の手法を提案した。この手法は,一光子干渉を利用しつつも従来の方法とは異なり,位相制御の難易度を大幅に軽減できる点が特長。特に,光路の位相や遠隔地間のレーザー位相を厳密に合わせる必要がなくなり,遠隔地での利用がより容易になった。
新たな手法では,複数のモードを用いて,従来の一光子干渉を利用した手法と同様に,位相に敏感な量子もつれの生成を試みる。この際,2つ以上のモードで量子もつれの生成が成功するよう,十分な数のモードで試行することが重要となる。
成功した2つのモードは,時間的な変化も少ない似た環境による位相の影響を受けるため,それらをペアにすることで位相の類似した部分を打ち消すことができる。このペアリングによって,従来と比較して位相制御の難易度が大幅に緩和された。
さらに,特定の条件下では,従来の一光子干渉に基づく手法よりも高いもつれ配送率を達成することが確認されており,今後の量子インターネット基盤技術としての発展が期待されるという。
研究グループは,この提案手法を実装することが今後の目標であり,開発技術実装により量子中継機能の実証へと早期に進む計画だとしている。