大阪大学の研究グループは,作製が容易な周期スロット構造を窒化物半導体レーザーに適用することで,青色波長帯において世界で初めて小型で実用的な波長可変レーザーを実現した(ニュースリリース)。
医療機関や公共機関での殺菌・消毒には,エキシマランプ(波長222nm)や深紫外光LED(波長265nm)が用いられているが,前者は効率が低く寿命が短い,後者は人体に有害なため応用範囲が限られるなどの問題があった。
また非線形光学結晶を用いた波長変換による高出力深紫外光レーザーが産業用に実用化されているが,大型・高価で上記の用途には適していない。そこで小型で実用的な波長230nmの遠紫外光源を実現すべく,研究グループは窒化アルミニウム導波路波長変換デバイスやSrB4O7を用いた微小共振器型波長変換デバイスを提案・作製し,遠紫外光発生を実証してきた。
しかし励起光源には大型・高価な超短パルスレーザーを用いており,励起光源の小型化が必要不可欠だった。しかし市販の青色半導体レーザーは多波長発振であり,単一波長発振および波長チューニングのための外部共振器構造を導入するとサイズが数十cm,価格が数百万円となってしまう。
研究グループは,長さ約1mmの青色半導体レーザーの内部に単一波長発振のための周期スロット構造と波長チューニングのための電極を導入することで,小型で実用的な青色波長可変半導体レーザーの実現を試みた。
周期スロット構造における反射スペクトルを伝達行列法により計算し,各種パラメータを決定した。InGaNレーザー用エピタキシャルウエハー上に,リッジ構造と周期スロット構造を電子ビーム描画と反応性イオンエッチングにより形成した。電極を形成後,劈開・端面コーティングにより周期スロット半導体レーザーを完成させた。
まずリッジ構造にのみ電流を注入し,単一波長レーザー発振を確認した。その後周期スロット構造に注入する電流を徐々に増加させ,波長可変特性を得た。これにより青色波長帯で初めての波長可変半導体レーザーの実現に成功した。
この窒化物半導体波長可変レーザーは405nm帯で発振するが,この構造を波長460nm帯レーザーに適用することは容易だという。このレーザーと研究グループが開発した新規構造波長変換デバイスを組み合わせることで,小型で実用的な遠紫外光源の実現が可能となるとしている。