日本大学の研究グループは,光によって組換え微生物の機能をコントロールできる技術(LiEX )システムを開発した(ニュースリリース)。
バイオテクノロジー技術の発展によって遺伝子組換え微生物を用いた有用物質生産(有用酵素や低分子化合物など)の基礎研究が盛んに行なわれており,組換え微生物を精密にコントロールする高度な技術が求められている。
従来の大腸菌による有用物質生産のコントロールには人工化合物(生産コストの最大40%を占める)や抗生物質などの化学物質が用いられているため,高コスト・使い捨て・培地組成を変化させる・多剤耐性菌の出現といった多くの問題点を抱えていた。また,現在使用されている大腸菌や酵母では合成が難しい有用物質も多く存在する。
研究グループは,LED光源を用いた光によって制御できる微生物生産系LiEXシステムの開発に成功した。今回の研究では生理活性物質生産菌として知られている放線菌を細胞化学工場として利用した。放線菌は,大腸菌や酵母とは諸性質が大きく異なることから,それらが苦手としているタイプの有用物質を生産できると予想される。
LiEXシステムは光センサーとして働くLitRと遺伝子発現レベルを増大させるLitS遺伝子から構成されている。LitSを含むRNAポリメラーゼが有用遺伝子の発現をオンにすることによって,光を照射されたときにのみに組換えタンパク質や有用物質が生産される仕組みとなっている。
研究グループは,LiEXシステムは環境に配慮した次世代型のバイオ生産系であり,今回の技術の発展は発酵によるバイオものづくりを大きく変革する可能性をもっているとしている。