千葉大学の研究グループは,CO2またはCOから用途に合わせて,C1~3パラフィンやエチレン/プロピレンを,用途に応じて選択的に生成する光触媒を発見した(ニュースリリース)。
光エネルギーなどの持続可能なエネルギー源を基にして,CO2を燃料や有用な化学原料に変換できれば,新たなカーボンニュートラルサイクルを形成することができる。一方で,実際に持続可能な社会で適用されるためには,生成物の価格や CO2変換のためのシステムが社会的に実装する際にコスト的に成り立つかどうかについての考慮が必要となる。
光触媒を用いてCO2を光還元して得られる生成物の価格が,C1化合物であるCOやメタン(CH4)の場合には,1kgあたり0.06–0.18米ドルであるのに対し,C2,3の炭化水素では,1kgあたり0.9–8米ドルで取引されている。
そのため,CO2を還元するためのエネルギーが自然エネルギーを利用して再生可能なことに加え,光触媒,還元反応装置(設備)にかかるコストが生成物の価格を下回ることが期待され,持続可能な社会での適用がより現実味を帯びてくる。
研究では,半導体の性質を有し,紫外可視光照射により電荷分離が起きる酸化ジルコニウム(ZrO2)と金属状に還元したコバルト(Co)ナノ粒子とを組み合わせた光触媒でC2,3の炭化水素を生成することが見出されたため,その選択生成のための光反応条件を詳細に検討した。
コバルト(Co)–酸化ジルコニウム(ZrO2)光触媒に紫外可視光を照射することで,CO2から炭素数が 1〜3 のパラフィン(C1~3パラフィン)を生成できることが確認された。また,一酸化炭素(CO)からは炭素数が2,3 のオレフィン(C2,3オレフィン)を選択して生成することが分かった。
CO2からCOを選択して得るのは比較的容易なため,このCo–ZrO2光触媒を使うことで,CO2からC1~3パラフィンやエチレン/プロピレンを,用途に応じて選択的に得ることが可能になるという。
研究グループは,C1~3パラフィンは新たなカーボンニュートラルサイクルを実現するための燃料として,また,エチレン/プロピレンは持続可能社会で経済的にも有用な高付加価値物質として,カーボンニュートラルサイクルの実現に寄与することが期待されるとしている。