キヤノンは,ペロブスカイト太陽電池の耐久性および量産安定性を向上させることが期待される高機能材料を開発した(ニュースリリース)。
次世代の太陽電池として注目されているペロブスカイト太陽電池のペロブスカイト層(光電変換層)中の結晶構造は,大気中の水分,熱,酸素などの影響を受けやすく,耐久性が低いことが知られている。また,大面積のペロブスカイト太陽電池は量産安定性が低いという課題がある。
これらの課題を解決するには,光電変換層を被覆する膜の必要性が認識されている。そこで同社は,複合機やレーザープリンターの基幹部品である感光体の開発を通して培ってきた材料技術を応用し,光電変換層を被覆する高機能材料を開発した。
この材料は,従来の材料では難しかった,高い光電変換効率を維持しながら光電変換層を厚く被覆できることが特長。従来の被覆層は数十nm程度であるのに対し,この材料は100-200nmで被覆が可能。
同社はペロブスカイト太陽電池の発明者である桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授らとの共同研究を通じて性能評価を行なった結果,この材料がペロブスカイト太陽電池の耐久性向上に寄与する可能性を実証し,量産安定性の向上も期待できることを確認した。
これらの課題解決により,ペロブスカイト太陽電池の普及に貢献することが期待される。同社はペロブスカイト太陽電池の量産に取り組む企業との協業を目指して,2024年6月にこの材料のサンプル出荷を開始する。今後,さらなる技術開発を進め,2025年の量産開始を目指すとしている。