電通大ら,紫外線撮像装置で巨大オーロラ観測に成功

電気通信大学,国立極地研究所,京都大学は,ノルウェースバールバル諸島に設置されている全天型オーロラ撮像装置と,DMSP衛星に搭載された紫外線撮像装置による共同観測によって,北極域を埋め尽くすように出現した巨大なオーロラの観測に成功した(ニュースリリース)。

普段,極地方で観測されるオーロラは,太陽風が強まったときに地球近傍の宇宙空間(磁気圏)から大気へと電子が降り込んで来ることによって発生する。しかし,太陽風が消えたときにオーロラは発生しうるのか,発生するとすればどのようなメカニズムなのかについての理解は不十分だった。

研究グループは,複数の全天型オーロラ撮像装置とDMSP衛星に搭載されている紫外線撮像装置で,太陽風が消えていた時間帯に,極地方全体を完全に覆い尽くすほど巨大で,地上からも肉眼で見えるほど明るいオーロラが発生していたことを明らかにした。

太陽の磁場がある向きになったとき,太陽の磁場と地球固有の磁場である「地磁気」が繋がりあい,太陽と地球が磁気の糸(磁力線)によって結ばれる。このとき,太陽表面のコロナホールと呼ばれる構造から,磁場に沿って宇宙空間に放出される「ストラール」と呼ばれる太陽起源の電子群が,磁気の糸に沿って直接地球大気に導かれ,極地方に雨のように降り注ぐ。

この「電子の雨」のことを「ポーラーレイン」と呼ぶ。人工衛星による太陽風観測データの解析から,太陽風が消えた日に観測された事例では,太陽の磁場と地磁気が繋がりあう条件が満たされていることが分かった。

太陽を放出されたストラール電子は,太陽と地球を結ぶ磁気の糸をつたいながら数日かけて北極地方に降り注いだと考えられる。また,太陽風が消えていたため,通常よりも遙かに大量のストラール電子が北極に到達できたと考えられる。

太陽から直接降り注ぐ電子の雨に伴ってオーロラが発生しうることはこれまでも報告があったが,今回の研究は,極冠域全域を覆うほど大規模で,極端に明るいポーラーレインオーロラを宇宙と地上から同時に撮像することに初めて成功した。また,太陽風が消えていることが,この特別なオーロラの発生にとって必須の条件であることを突き止めた。

この研究は,ポーラーレインオーロラの生成メカニズムや発生条件を明らかにするだけでなく,ポーラーレインオーロラが複雑な模様を持つことを明らかにした。研究グループは,今後,ポーラーレインオーロラを地上から高い時空間分解能で観測することが,太陽表面や惑星間空間を可視化することに繋がるとしている。

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