サウジアラビアSABICは,コ・パッケージド・オプティクス技術を用いたマイクロレンズアレイの製造に最適な「EXTEM RH樹脂」を開発した(ニュースリリース)。
シリコンや他の基板を用いたフォトニック集積回路(PIC)が開発されたことで,データ伝送の高速化を図りながらコンパクトな製品設計が可能となっている。だが一方で,光導波路において光モード・フィールドとシングルモード光ファイバーとの間のサイズ差が課題の1つとなっている。
これに対し,ビーム拡大光学素子(この場合は自由曲面レンズアレイ)を光コネクターインターフェースの両側に設置し,ファイバーアレイをより大きな自由空間ビームに結合する方法がある。拡大ビーム結合を用いることで,横方向のアライメント公差が緩和されるとともに,塵埃などの汚染物による伝送路の遮蔽を抑えることができる。
こうした新しい光学技術の導入を加速させるには,部品単価が比較的低いマイクロオプティクス(微小光学素子)を大量かつ合理的に製造することが必要だが,これは溶融石英やガラスでは達成が難しい。一方,この樹脂はマイクロオプティクスの加工や組み立ての規模とコスト効率を向上させるいくつかの方法を提供する。
第1に,この樹脂を用いたマイクロ成形は,高い信号整合性と低い光損失でミリメートルサイズの部品を数百万個の規模で供給することができる。これは,データサーバーのバックプレーン,通信スイッチ,スーパーコンピューターやファブリック接続されたネットワークなどにおいて,最先端の光パッケージングやカップリング技術の迅速な導入促進に寄与するとする。
高耐熱性であるこの樹脂は,これまでMLAの成形に用いられてきた従来材料の欠点を克服するという。この樹脂は,ガラスや熱硬化性樹脂と異なり,複雑なレンズ形状を設計する自由度を拡大する。マイクロ成形は,研削や研磨などの二次加工が不要で,迅速な大量生産が可能となるため低コスト化が可能。
さらに,この樹脂を用いて成形されたマイクロオプティクスは,リフロー工程の前段階で光学的に透明な接着剤を使用することで,光ファイバーとPICの位置合わせが可能となり,パッケージング工程を簡素化することができるという。
同社は,3月26~28日に米カリフォルニア州サンディエゴのサンディエゴ・コンベンション・センターで開催されたOFC 2024において,この製品と上記の光導波路結合のデモを紹介した。