日本電信電話株式会社(NTT)は,用途ごと・設置場所ごとに異なる様々な種類の光ファイバにおいて,通信断を生じさせることなく分岐・合流させる施工技術を世界で初めて実証した(ニュースリリース)。
光通信技術の進展・普及により,我々の生活の中では様々なIT端末の活用が拡大している。それに伴い,今後は無線基地局やセンサなど多種多様な端末がネットワークへ接続されることが想定される。
これを実現するためには,多種多様な端末が迅速かつ容易に接続できる柔軟な光ネットワークが必要となる。しかし,これまでは通信を遮断せずにネットワーク構成を変更することができないため,新たな場所に端末を接続するためには新たな光ファイバケーブル等のネットワークを構築する工事が必要であり,設備構築コストやネットワーク開通まで時間を要している。
世界的に広く使われている光ファイバは,多様な屈折率分布を有しており,それぞれ伝搬特性(実効屈折率)が異なる。これらの光ファイバを分岐させる従来技術においては,分岐元の光ファイバと分岐先の光ファイバとで同じ伝搬特性(実効屈折率)である必要があった。
そのため,分岐元の光ファイバの実効屈折率を現地で把握し,それに適した分岐用光ファイバを用意する必要があった。ところが,実効屈折率の把握を行なうためには,分岐元の光ファイバをサービス停止する必要があるため,現実的には困難な状況だった。
以上のような背景から,通信中の光ファイバがどのような実効屈折率を有している場合であっても,分岐を可能とする技術の確立が課題となっていた。
同社は,コア直径を変化させた構造を有する分岐用光ファイバの作製方法を開発した。実効屈折率は,コア直径により変化するため,この構造の光ファイバは,多様な実効屈折率を有する光ファイバとして使うことが可能だという。
これを分岐用光ファイバとして使用することで,分岐元光ファイバの実効屈折率がどのような場合であっても,光ファイバを分岐することが可能となる。同社は,この光ファイバを作製する技術,ならびにこれを用いた分岐を,世界で初めて実証した。
これにより分岐可能な光ファイバの範囲を従来と比べて大幅に拡大し,光アクセスネットワークで一般的に使用されている国際標準規格を満たすすべての光ファイバを分岐・合流することが可能となった。
同社は,この技術を活用することで,どこからでも通信へ影響なく接続できる柔軟な光ネットワークを実現し,通信事業者の設備構築コスト削減や工期短縮による早期のネットワーク利用が可能になるとしている。