豊田合成は,除菌用の水銀ランプの代替光源として期待されるUV-C(深紫外線)LEDにおいて,世界最高水準となる光出力200mWを実現した(ニュースリリース)。2024年4月より国内外でサンプル販売を始める。
UV-C LEDはコロナ禍で空気や物の表面などの除菌機器向けに利用が広まったが,出力に課題があり,浄水場など高い除菌能力が必要とされる場面では現在でも水銀ランプが使われている。
今回同社は,1チップで200mW級の光の出力(@350mA)を実現したUV-C(275nm) LEDを開発した。LEDの素子構造などを改良し,取り出せる光の量を約4倍に増やした。具体的には,チップデザイン・構造・サイズの変更を行ない,チップ内部での光の吸収を低減した。これらは青色LEDの技術を応用したとしている。
また,多重反射を抑えるパッケージ構造に改めることで,従来7%程度だった光取り出し効率を向上。これらにより同社従来製品の約4倍となる,光出力200mWを達成した。これは他社製品に対して1.5倍程度の数値だという。
このLEDを水殺菌モジュールに用いた実験では,モジュールの殺菌能力を示すRED(換算紫外線照射量)が従来製品を用いた場合に比べて約3倍に高まったほか,水ingとの実験では,MS2(大腸菌ファージ)の不活化率が20倍高まったことを確認した。
LED1つあたりの出力が高まったことで,これまでよりも少ない数のLEDで同じ出力を達成できるため,装置の小型化や省電力化が可能。また,低出力での使用においても,より低い投入電流で既存のLEDと同様の光出力を実現できるので,製品の長寿命化などが期待できる。
今回同社は,指向特性が90°の広角タイプ(出力200mW)と47°の狭角タイプ(出力190mW)の2種類をラインナップ。いずれも波長は275nmだが,より殺菌・不活化の能力が高い265nm(いずれも出力150mW)についても6月よりのサンプル提供開始を目指している。
UV-C LEDはコロナ禍において大きな注目を集めたが,コロナの5類への移行に伴い,その市場も縮小している。同社は今後,水浄化を中心にUV-C LEDの市場は回復していくとみており,高出力化によって本格的な水銀ランプの代替が始まり,インフラへの適用も進むとして,2030年の世界市場規模は500憶円程度を見込む。
同社でもこの製品を用いた世界最小ながら最高除菌レベルを達成する小型水浄化ユニットを提案しており,水や空気などの除菌用途でのUV-C LEDの利用拡大を推進するとともに,半導体産業への適用も見込むなど,2030年までに事業規模を数十億円~100億円程度に育てたい意向だ。
なお,同社は2024年5月29日(水)14:00~14:50,「豊田合成のUV-C LEDの最新の開発状況」と題してこの技術に関するウェビナーを予定している(申込ページ)。