豊技大,視覚的な光沢感と瞳孔反応の関係を解明

豊橋技術科学大学の研究グループは,視覚的な光沢感と瞳孔反応の関係を明らかにした(ニュースリリース)。

人間の目に入ってくる光量を調節する器官である“瞳孔”は,物理的に明るいものを見ているときに小さくなり(縮瞳),暗いものを見ているときに大きくなる(散瞳)。瞳孔を自分の意志でコントロールすることは困難であることから,人間の視覚処理の仕組みを調査するための客観的な指標として,瞳孔反応が近年特に注目を集めている。

最近の研究では,物理的な明るさは同じでも,主観的に明るく見える錯視画像や暗く見える錯視画像では,瞳孔が小さくなったり,大きくなったりすることがわかってきている。しかし,光沢が高く感じられる画像や低く感じられる画像に対して,瞳孔がどのように反応するかはよくわかっていなかった。

そこで研究グループは,光沢の異なる様々な物体画像を使用して,心理物理実験を実施した。実験参加者に画像を呈示し,どれくらい高く光沢を感じるかを7段階で評定するように求めた。

同時に,その実験中の参加者の瞳孔の大きさ(瞳孔径)を,眼球運動計測装置で記録した。瞳孔径が画像の物理的な明るさの影響を受けないように,すべての画像は同じ明るさになるように事前に調整した。加えて,周囲の明るさの影響も受けないように,実験は一定の明るさにコントロールされた暗室内で行なった。

実験の結果,物理的に同じ明るさであっても,光沢が高いと感じる画像を見ているときは,瞳孔がより小さくなっていることがわかった。光沢感の高い画像が持つ“ハイライト”と呼ばれる白い領域が,人間の視覚系に対して,光が反射しているような状況に感じさせ,実際の光量は変化していないにも関わらず,瞳孔を小さくさせた可能性が考えられるという。これは,明るく見える錯視画像が瞳孔反応に影響を与えたという先行研究の報告とよく似ているとする。

この成果は,主観的な光沢感と瞳孔反応の関係を初めて明らかにしたもの。光沢感や透明感をはじめとする“質感”は物体の価値判断に大きな影響を与える。研究グループは,今後は様々な質感を対象にこの現象が展開されるかを検証し,視覚系で物体に対する価値判断が処理される仕組みをより深く理解することが期待されるとしている。

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