東工大,有機-無機ペロブスカイトに派生構造を発見

東京工業大学の研究グループは,太陽電池材料として注目される有機-無機ハイブリッドペロブスカイト分子イオンを添加することによって新規化合物を合成し,これまで知られていなかった一連の派生構造が形成されることを明らかにした(ニュースリリース)。

ABX3の組成式で表されるペロブスカイト型構造を有する有機-無機ハイブリッドペロブスカイト化合物は,これまで数多くの派生構造が発見されている。こうした派生構造では,BX6八面体のつながりを変えることで光学特性を制御できる。

一方で,ペロブスカイト酸化物で盛んに研究されてきた,欠陥が規則的に整列する化合物系列は,有機-無機ハイブリッドペロブスカイト化合物ではこれまで報告がなかった。

研究グループは,ペロブスカイトFAPbI3に含まれているヨウ化物イオン(I)の一部を,分子性のイオンであるチオシアン酸イオン(SCN)に置き換えることで,新しい層状ペロブスカイトFA4Pb2I7.5(SCN)0.5の合成に成功した。

単結晶を用いたX線結晶構造解析の結果から,この新規化合物では,ペロブスカイト構造の基本骨格を維持したまま,チオシアン酸イオンがペロブスカイト構造に柱状の穴を開け,その穴が層状に整列していることが明らかになった。

これは,ペロブスカイト構造中の三次元に連なったPb-I結合に対して,チオシアン酸イオンがキャッピング剤として機能することで,柱状欠陥の形成に寄与したと考えられるという。

この化合物は,研究グループが昨年報告したFA6Pb4I13.5(SCN)0.5と合わせて,新しいペロブスカイト派生構造FAn+1Pbn−1I3n−1.5(SCN)0.5 として統一的に記述することができる。

ペロブスカイトFAPbI3,FA6Pb4I13.5(SCN)0.5,FA4Pb2I7.5(SCN)0.5はそれぞれn=∞,n=5,n=3に対応する。ここで1/nが柱状欠陥の存在量に対応することから,チオシアン酸イオンの導入量により構造を制御できることが今回明らかとなった。

加えて,この新しいペロブスカイト派生構造を持つ化合物系列では,欠陥量が増加する(nが小さくなる)と光学特性に寄与するPbI6八面体のつながりが途切れ,光学バンドギャップが大きくなることが分かった。

またFA4Pb2I7.5(SCN)0.5(n=3)は,PbI6八面体の二次元的なつながりに対応して,UV照射下で高輝度の赤色発光を示した。このことから,研究グループは,欠陥工学に基づくペロブスカイト探索をさらに推進することで,光機能材料としての発展が期待できるとしている。

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