古河電気工業は,前方励起ラマンユニットを用いた光伝送システムにおけるC+Lバンド800Gb/sの伝送信号光の品質を向上させた(ニュースリリース)。
ラマン増幅は光ファイバ通信システムを支える技術で,現在は受信側から励起光を伝搬させる後方励起ラマン増幅が標準的に用いられている。前方励起ラマンユニットは,その出力光の広帯域性と低雑音性から導入の実現が期待されていたが,低雑音の励起光源の開発が課題だった。
同社は2023年3月に前方励起ラマン増幅における課題を解決し,光ファイバ通信システムに適用できる程度に低い雑音増幅特性を備えた,前方励起と後方励起を同時に行なう双方向励起ラマン増幅を実現した。伝搬した信号光の光学特性(低雑音)が良好であることを確認できたため,信号光の通信品質(Q値)向上の確認が期待されていた。
今回,前方励起ラマンユニットの増幅帯域をCバンドのみからC+Lバンドに拡張し,C+Lバンドにおいて150kmの標準伝送用光ファイバに次世代の通信速度である800Gb/s(100Gbaud偏波多重16QAM)信号光を伝搬させ,出力信号光の品質を測定した。
前方励起ラマンユニットを用いる双方向励起ラマン増幅を適用した信号光の品質を示すQ値は,標準の入力パワー0dBm/chにおいて,後方励起ラマン増幅を適用した場合より0.5dB,標準の光増幅器(EDFA)を適用した場合より1.0dB大きく,信号品質の向上を確認した。
これにより,伝送距離が同一の場合,より大容量な情報を伝送できるようになるため,前方励起ラマンユニットを用いる双方向励起ラマン増幅は,近年の光ファイバ通信システムの課題である,伝送容量の拡大に寄与するとしている。