岐阜大ら,屋外設置型テラヘルツ通信装置を開発

岐阜大学と早稲田大学は,屋外設置可能なテラヘルツ通信装置を開発し,早大西早稲田キャンパス(東京都新宿区)内で長期連続伝送実験を開始した(ニュースリリース)。

次世代移動通信システムBeyond5G /6Gシステムの基地局を接続するためのネットワークにおいて,その一部を高速テラヘルツ通信が担うことが期待されている。

これまでの研究報告のほとんどは実験室内での実証や測定器を使った通信の模擬によるものだった。テラヘルツ無線は雨や雪の影響を受けやすいという課題があり,その影響を評価する必要があった。また,ミリ波帯・テラヘルツ帯ではその波長の短さからアンテナ方向の精密調整が必要という課題もあった。

研究グループは,屋外設置可能なIEEE802.15.3d準拠のテラヘルツ通信装置の開発に成功した。テラヘルツ帯通信実験では測定器による伝送の模擬や単方向の画像伝送をデモンストレーションするものが大半だが,今回開発した装置はイーサネットインターフェースを有しており,実データの双方向伝送を可能としている。

また,屋外において連続伝送実験を行なうための筐体の開発,センサー装置の実装を行なった。ミリ波帯やテラヘルツ帯ではビーム幅の細い電波を用いるが,アンテナ方向の調整にコストがかかるという課題があった。

今回の研究では,精度の高い機構設計と精密電動雲台による制御により,自動アンテナ方向調整を実現した。また,テラヘルツ帯では送信と受信のアンテナを共通にすることが困難であったために,それぞれ個別のアンテナを用いることが一般的だった。

この研究では,300GHz帯回路を設計し,送受アンテナ共通化と機構設計の精密化により,装置の小型化,防水対応,アンテナ方向精度の向上を図った。

現在,長期連続伝送実験を,早大西早稲田キャンパス内に一組のテラヘルツ通信装置を設置し実施している。気象センサー,装置内温度センサー,振動センサーなどを備え,風雨・降雪・温度変化と伝送特性の相関を連続的に観測することが可能。

2024年2月5日(月)の東京地方降雪時においても連続データ取得をし,大雪時に受信電力(RSSI)の大きな変動が確認された。詳細については現在解析中だがアンテナへの着雪と落雪が繰り返されたことによると推定している。

研究グループは,今回開発した屋外で動作させることが可能な小型のテラヘルツ通信装置を活用し,実用化に向けて,伝送容量・伝送距離拡大や,他の無線器との干渉の影響の解析など様々な実験を実施するという。

さらに,複数のテラヘルツ通信装置を連携させ,悪天候時にもおいても安定的に動作するシステムの実現を目指すとしている。

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