東工大ら,光合成微生物複製に関わるタンパク質発見

東京工業大学,東京農業大学,静岡大学,独フライブルク大学は,光合成微生物であるシアノバクテリアのプラスミド複製に関わるタンパク質CyRepXを新たに同定し,これを用いたベクターを開発した(ニュースリリース)。

プラスミドは細胞内で複製されることで維持されるが,複製機構が同じプラスミドは同じ細胞では共存できない。シアノバクテリアが複数のプラスミドを同じ細胞に持つということは,それぞれのプラスミドの複製機構が異なっており,互いに協調しながら細胞機能を担うと考えられる。しかしながら,シアノバクテリアにおいてプラスミドの複製に関する情報は極めて限られていた。

Synechocystis sp. PCC 6803(PCC 6803)は一番最初に全ゲノム配列情報が完全解読されたシアノバクテリアであり,主染色体の他に4つの大型プラスミドを持つことが知られている。研究グループは,これまでにpSYSAの複製に関わる因子CyRepAを同定したが,他の大型プラスミドの複製因子は不明だった。

今回の研究ではPCC 6803のゲノムライブラリーを用いた網羅的スクリーニングを実施し,新たに複製活性を持つ領域を2ヵ所を見つけた。この2つの遺伝子は共にpSYSX上に存在しており,配列が酷似していることから同様の機能を持つホモログであると考えられた。

立体構造予測プログラムを用いて解析を進めた結果,Slr6031,Slr6090の立体構造が他の微生物が持つDNA複製関連タンパク質と似ていることに気がついた。

次にslr6031,slr6090遺伝子を用いて発現ベクターp6031およびp6090を構築し異種のシアノバクテリアであるSynechococcus elongatus PCC 7942(PCC 7942)を用いて複製活性を評価した。p6031およびp6090は共にPCC 7942において保持されたことから,Slr6031/Slr6090を新規の複製因子としてCyRepXと命名した。

さらに研究グループはp6031/p6090の有用性を検証した。CyRepA配列を用いて作られたpYSベクターと比較すると,CyRepXを搭載するp6031/p6090ベクターの細胞内でのコピー数は少なく,GFPの発現量や安定性は低いことがわかった。

しかし,PCC 7942細胞内においてp6031/p6090はpYSや他のプラスミドと共存できることが示され,PCC 6803の細胞内で起こっている「プラスミド同士の協調」を人為的に再現することができた。

研究グループは,この研究で開発されたベクターはシアノバクテリアの産業利用を加速させる新たな遺伝子工学ツールとして期待できるとしている。

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