広島大学の研究グループは,様々な有機置換基で修飾可能なナノグラフェンの特徴を生かすことで中間色発光が可能な複合材料を実現した(ニュースリリース)。
発光材料は様々な用途に用いられるため,現在盛んに研究がなされている。発光色は発光を担う発光性分子の電子構造に影響を受けるため,全ての発光色が容易に達成できるわけではない。
例えば,紫色発光は大きなバンドギャップが必要であるため,炭素・水素・窒素などの典型元素からなる有機化合物で紫色発光を実現した例は極めて少ない。
このような場合,青色発光や赤色発光などを混合することで紫色発光が再現される。単一構造体で紫色発光を含む中間色の発光を自在に再現できれば,発光材料の開発を大幅に短縮することが可能になる。
黒鉛からトップダウン法により得られるナノグラフェンは,エッジ部分にカルボン酸などの含酸素官能基を多数有する。そのため,複数の機能性有機置換基で修飾することで多様な機能を発現させることが可能。
研究グループは,この性質を利用して青色発光と赤色発光を示す有機置換基をナノグラフェンに一括導入することで紫色発光の再現を目指した。その結果,360nmの光で化学修飾したナノグラフェンを励起したところ,青色発光と赤色発光が同時に起こり,中間色である紫色発光を再現することができた。
さらに,ナノグラフェンに導入した青色発光と赤色発光の発光強度が励起光の波長と有機溶媒の種類に依存することを利用し,励起波長を変化させることで様々な色での発光を実現した。ナノグラフェンが凝集することで発光強度が増強するという凝集誘起発光増幅が起こることを突き止めた。
この性質を利用することで,凝集状態でも発光性能の低下を抑えられることが期待される。実際に,ナノグラフェンをポリマー樹脂であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)に分散させたところ,発光性能の低下を抑えつつ紫色に発光するフィルムの実現に成功した。
研究グループは,今回の研究を応用することで,様々な中間色の発光を再現可能な炭素材料の開発に大きな弾みがつくことが期待できるとしている。