東京農工大学と早稲田大学は,メタサーフェスを利用して広視域角・高解像度・高効率のフルカラーホログラフィ動画を実現した(ニュースリリース)。
光の波面を記録・再生する技術であるホログラフィは,裸眼で3次元映像を観察できるため,究極の立体ディスプレーとも呼ばれ注目されている。
このホログラフィは各画素を通過した光の干渉を利用して像を投影するため,広い角度から観察可能な高精細画像を投影するためには,画素の間隔が1μm以下の,超高密度の表示用デバイスが必要となる。
そこで,光の波長以下の単位構造であるメタアトムを非常に高密度に配列したメタサーフェスを用いて,高画質な動画の投影を目指す研究が多く行なわれている。
研究グループにおいても過去にモノクロ動画の投影に成功している。しかし,これらの先行研究にはカラー化ができていないという問題点や,効率が低いという問題点があった。
今回,研究グループは,30フレームからなるフルカラー動画の投影を目指し,窒化シリコンのナノ柱をメタアトムとして,ガラス基板上に数億本配置し,90フレーム(30フレーム×3色)からなるホログラム列を1枚の基板上に形成した。
各フレームは2322×2322画素と先行研究や一般的なディスプレー(フルHD)よりも高解像度であり,340nmの画素間隔によりホログラム前面からの観察領域全体をカバーする180°の視域角を有している。
また,ナノ柱の製作を最適な加工条件の下で行なうことで,光の利用効率を向上させている。投影したのは地球が回転する動画(2D)で,3色の投影像を重ね合わせることで投影動画のカラー化を実現した。
さらに,自動ステージを用いて基板を機械的に動かすことで,人間の目で十分に滑らかに見える再生速度である55.9fpsでの投影に成功した。
研究グループは,この成果は,立体映像技術の発展および次世代ディスプレーの開発に貢献することが期待されるとしている。