中央大学と大阪大学は,測定対象物を傷つけない薄くて柔らかいシート型光センサの開発に成功し,光だけでなく熱や分子などに関連する電磁波(光)を簡便に検知・イメージングできる無線計測システムを実現した(ニュースリリース)。
従来の光センサは,硬い半導体素子や厚く頑丈な実装基板を用いて構成されてきた。一方で,薄型で柔軟なシート型光センサは,対象物表面に密着しながら表面や内部を撮像できるため,ヘルスケアや非破壊検査への応用に向けた研究開発が増えつつある。
しかし,従来のシート型光センサの検出帯域は狭く,対象物の熱や化学分析に適した長波長(赤外~テラヘルツ)の電磁波(光)検出が困難だった。
今回,研究グループは,長波長赤外光を含む広帯域光を検出可能なシート型光センサの開発に成功した。このシート型光センサは,カーボンナノチューブ(CNT)光検出器と有機トランジスタからなる回路を搭載している。
広帯域の電磁波を吸収できるCNT膜を光検出器として利用することで,波長が3桁以上異なる広帯域光(可視光からテラヘルツ)の検出が可能となった。また,この光検出器は,厚さ5μm以下の有機基板に印刷形成することで,厚い基板(厚さ500μm以上)上に形成された場合と比較し,出力電圧は約21倍,応答速度は15倍以上へ向上した。
同様に薄膜基板上に形成された有機トランジスタは,チャネル直上への遮光層導入によって,光照射下における基本特性とスイッチング機能が安定化した。いずれの素子も柔軟性を有しており,曲げ半径1mm以下で1000回変形させた際においても,安定した特性を有していた。
シート型光センサは,CNT光検出器と有機トランジスタからなるセルがアクティブマトリックスとして集積実装されることで作製された。このシート型光センサは,無線計測システムによって駆動するため,携帯性に優れている。
また,曲げられた状態においても安定したイメージングが可能。このシート型光センサの機能実証として,赤外光照射の動画撮影に加え,長波長の赤外検出を活用した熱イメージングや液質検査に応用できることが示された。
研究グループは,フレキシブルセンサによる広帯域光分析を可能とすることで,生体や生体代謝物の非侵襲モニタリング,インフラ構造物の非破壊検査,配管内部の非採取検査など,様々な検査技術へ貢献することが期待される成果だとしている。