千葉大,分子集合体の形と発光特性の関係を解明

著者: 梅村 舞香

千葉大学の研究グループは,末端のない環状分子集合体が,末端のある鎖状分子集合体とは異なる発光性能を示すことを発見し,そのメカニズムを解明した(ニュースリリース)。

環状分子は,末端がないことによる構造変化の抑制などの効果によって,末端のある鎖状分子とは異なる性質を示すことがわかってきている。

原子をつなげるのではなく,分子を集めて分子集合体を作る環化の効果を知るには,同じ分子からなる環状分子集合体と鎖状分子集合体の性質を比較する必要があるが,分子の集合過程を制御して形を作り分けることは難しい。

研究グループはこれまで,溶液中で水素結合によって風車状ユニットを形成し,このユニットがカーブを描きながら弱い力で積層することで,一定の湾曲を描きながらヒモ状に集合する分子を開発し,環状と鎖状分子集合体の作り分けに成功している。

一般的に単体の分子では,末端がないことで構造変化が抑制される環状分子は,鎖状分子とは異なる発光性能を示すため,分子集合体においても環状と鎖状構造とで発光性能が異なるのではないかと予想した。

実際,この分子の環状分子集合体は鎖状分子集合体よりもわずかに強いエネルギーの発光を示したが,潜在的に強く発光する分子ではないため,環状および鎖状分子集合体の発光性能の差が顕著でなかったと考えられた。

今回研究グループは,環状と鎖状分子集合体の発光性能の差を顕在化させるべく,強発光性部位を導入した発光分子を合成した。環状または鎖状分子集合体が含まれる二つの溶液を調製して発光を比較したところ,環状分子集合体は強い黄色発光を,鎖状分子集合体は弱い橙色発光を示した。

吸収した光と放出する光の割合を表す発光量子収率Φfは,環状分子集合体が21%,鎖状分子集合体が9%と,前者が2倍以上優れた発光性能を持つことがわかった。分子が光を放出する過程をピコ秒レベルで解析した結果,この現象は,鎖状分子集合体内部のこの分子がねじれやすく,光によって得たエネルギーが構造変化によって損なわれるためと分かった。

鎖状分子集合体内部の分子のねじれは,鎖状分子集合体が溶液中で変形することで生まれた「欠陥」で起きる一方,末端のない環状分子集合体は欠陥が生まれないため,強く発光できると考えられる。

実際,鎖状分子集合体内部よりも環状分子集合体内部においてエネルギーが2倍以上遠くまで移動することも明らかになり,鎖状分子集合体内部に存在する欠陥がエネルギーを捉えていることが示唆された。

研究グループは,この研究によって示された分子を環状に集合させるという手法の一般化が期待できるとしている。

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