名大ら,液晶の中にナノの孔を形成できることを実証

名古屋大学と名古屋工業大学は,流動性材料である液晶の中にナノの孔があけられることを世界で初めて実証した(ニュースリリース)。

アルミノシリケートからなるゼオライトなどのナノの孔をもつ多孔性固体材料は,その孔の中に分子を吸着することができるため,ガス分子や有機物質の分離・精製や,化学反応の場として応用されている。

研究グループは,環状の化合物を筒状に並べて構築するカラムナー液晶を設計し,その液晶内部にナノの孔を作る検討を行なってきた。しかし,液晶は流動性を持ち,結晶に比べて分子の並び方に揺らぎや動きがあるため,液晶の中に本当に孔が存在するのかについて実験的に証明することが困難だった。

そこで研究グループは,約1nmの孔のサイズをもつ大環状化合物を用いて作成したカラムナー液晶の細孔空間解析を行ない,この液晶がナノの孔をもつ多孔性液晶であることを明らかにした。

NMR(核磁気共鳴)分光法は,試料の中で原子が置かれた化学的環境や原子の動きを観測することに優れた分析法であり,分子の構造解析などに用いられている。希ガス元素であるXe(キセノン)原子を観測するためのNMR分光法である129Xe NMR分光法は,多孔性固体材料や高分子材料中に取り込ませたXe原子の化学的環境や動きを観測することによる,材料中の細孔空間解析の手段として用いられてきた。

今回,大環状化合物のカラムナー液晶中でのナノの孔の存在を明らかにするために,Xeをプローブとして,129Xe NMR分光法による細孔空間解析を行なった。

幅広い温度範囲でカラムナー液晶相を発現する大環状化合物と共に129Xeガスを封入した試料について129Xe NMR測定を行ない,カラムナー液晶組織の中央にあいたナノの孔に取り込まれたXe原子のシグナルを観測することに成功した。

また,ナノの孔に取り込まれたXe原子の運動性を調べる実験を行なったところ,カラムナー液晶相の内部を拡散するXe原子は,直径が約0.5nmのチャネル状の孔があいたゼオライト中と同等の速度で拡散していることが示唆され,多孔性液晶の中にXe原子が動き回れる空間が存在していることが明らかとなった。

研究グループは,今後は,機能性分子をナノの孔に取り込ませ,液晶の流動性,配向性,相転移性を利用した,新しい触媒材料,有機薄膜太陽電池,導電性インク材料などへの応用に展開するとしている。

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