古河電気工業と慶應義塾大学は,総務省「グリーン社会に資する先端光伝送技術の研究開発」プロジェクトの一環として,空孔コアファイバケーブルを慶應義塾大学新川崎タウンキャンパス内の「慶應義塾大学未来光ネットワークオープン研究センター」に敷設し,複数のビル間を結ぶ超低遅延ネットワークキャンパスの実験を開始した(ニュースリリース)。
このセンターは,最先端の光のメトロ/アクセス技術を研究する拠点として2023年4月に総務省の支援のもと開所し,自動車運転やリアルハプティクス(感覚通信)といった最先端のアプリケーションを備えている。
今回敷設された空孔コアファイバは古河電工グループのOFS研究所が,世界で初めて実用化の大きな課題であった従来の光ファイバとの互換性の問題を解決し,かつ実用に近いレベルでケーブル化したもの。
これによりこのセンターの超低遅延ネットワークキャンパスでの通信速度は従来の約1.5倍となり,世界で初めて実用に近い環境で,世界中の研究者達が空孔コアファイバを用いたこれらのアプリケーション実験も行なえるネットワークを構築した。
慶應義塾大学は,この超低遅延ネットワークを使い,複数のコンピュータリソースをタイトに結合したリソースプール実験,さらには,Local5Gと組み合わせたネットワークコントロール型自動運転,感覚通信であるリアルハプティックス等の超低遅延性の応用実験を,また,古河電工は,このセンターにおいて経時安定性や環境安定性なども含めて実際に敷設された空孔コアファイバケーブルの特性を評価し,同ケーブルの実用化を推進する予定。
空孔コアファイバは,従来のガラスコア光ファイバとは異なる光閉じ込め原理により,ガラスよりも屈折率の低い空孔のコアに光を閉じ込めて伝搬する光ファイバ。従来のガラスコア光ファイバと比較して30%以上の低遅延化と1.5倍の通信速度(信号伝送速度の限界である光速と同程度)を実現し,Beyond5G時代に本格化する自動運転や遠隔ロボット,金融などの高速取引といったサービスの実現において極めて重要な超低遅延性を有している。
加えて,超多波長により通信チャネル数を10倍以上に増やすことが可能で,エネルギー密度および線形性は従来のガラスコアファイバと比較して1,000倍に向上することから,IoTへの電力供給を光ファイバで行なうなど,適用範囲の大幅な拡大を実現する。
また映像配信や携帯電話基地局等において,アナログ信号を直接光ファイバで送っても波形のゆがみがないことを利用し,電子回路を大幅に簡素化することで省電力化も期待できるとしている。