理研ら,コヒーレントX線による二つの計測法を融合

理化学研究所(理研),東北大学,北陸先端科学技術大学院大学は,X線光子相関分光(XPCS)と動的コヒーレントX線回折イメージング(動的CXDI)を組み合わせた解析法により,不均一な運動の解析がナノスケールからマイクロスケールで可能であることを実証した(ニュースリリース)。

粒子運動の解析には,レーザー光を用いて粒子からの散乱光強度の時間相関を調べる方法と,粒子を直接観察する方法がある。どちらの方法も可視光領域で広く利用されており,一般に動的光散乱法および単一粒子追跡法として知られている。

観察領域に存在する全ての粒子運動の平均情報が得られる動的光散乱法に対し,単一粒子追跡法では,粒子の個別運動について区別して情報を得ることができるが,顕微鏡の視野と被写界深度内の粒子しか分析できないため,試料環境が制限されることや,統計性の面で課題がある。

また,可視光領域の単一粒子追跡法では,ナノスケールの空間分解能で動的な現象を観察することは困難で,可視光を透過しない試料の観察もできなかった。

研究グループは,XPCSと動的CXDIを組み合わせることにより,異種溶液中の粒子運動を広い時空間スケールで解析するアプローチの提案・実証に取り組んだ。

SPring-8において,三角形開口を用いた動的CXDI実験を実施した。この動的CXDIでは,照明領域よりも広がった物体の再構成像を1枚の回折強度パターンから取得できるため,連続的な繰り返し測定によって物体の位置の時間変化を動画として取得できる。

試料には,コロイド状金粒子がポリビニルアルコール水溶液中に分散したものを用いた。散乱像の測定は,100ミリ秒間隔で1,000枚と,1秒間隔で2,000枚の連続測定の2パターンを実施した。

100ミリ秒間隔で得た散乱像を使って,XPCSに基づく解析を行なった結果,数百nmの範囲で粒子のブラウン運動に由来する時間相関が得られた。1秒間隔で得た散乱像に対しては動的CXDIに基づく位相回復計算を実施し,各時間での粒子位置情報を持つ実空間像(空間分解能40.6nm)を取得した。

これらの実空間像に対して,単一粒子追跡法に基づいた解析を実施した。個々の粒子運動を抽出・解析する際には,一般的な平均二乗変位の解析に加え,データ駆動型アプローチとして機械学習技術を採用することにより,粒子運動軌跡の屈曲度,異方性についても解析した。

その結果,μmの範囲では二つの運動モード,すなわち狭い領域に拘束された運動と異方的な拡散運動が存在することを見いだした。

研究グループは,可視光を透過しない物質や,高分子・生体細胞中の粒子の不均一な運動の解析への適用が期待されるとしている。

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