横浜市立大学,東京慈恵会医科大学,米国立がん研究所は,光免疫抗体を用いることで,生物種や薬剤耐性に関係なく様々な標的を選んで破壊,除去できる光免疫治療戦略の基準となる手法を確立した(ニュースリリース)。
がん治療のベースとなる多くの抗がん剤は,がん細胞を効果的に排除する一方で,正常細胞をも傷害してしまう弱点がある。
近年,がん細胞特異的な治療法が進展してきたが,今後もより多くの選択肢を増やし,効果的でかつ身体に優しい抗がん療法の開発が望まれている。光免疫療法は,狙ったがん細胞のみを排除するため,副反応の出にくい治療法の一つとなりえる。
細菌・真菌・ウイルスは,目で見ることのできない小さな生き物として微生物と呼ばれている。しかし,それぞれの性質は全く異なっており,真菌はどちらかというと細菌よりもヒト細胞に近い構造をしており,ウイルスについてはこれらとは全く異なる構造と性質を持っている。
それゆえ,細菌には細菌用の薬剤,真菌には抗真菌剤,ウイルスには抗ウイルス剤を開発する必要がある。しかし,10年以上の歳月をかけて開発した薬剤であっても,薬剤耐性株の出現により効力を失ってしまう問題があった。
また,抗菌剤は病原細菌だけでなく,いわゆる善玉菌として知られる常在細菌にも作用してしまうため,腸内細菌のバランスを乱してしまうことも問題になっている。一方,光免疫療法は,がん細胞だけでなく,標的を自由に設定でき,選択的に除去できるため,善玉菌に影響を与えることなく,病原菌を狙い撃つことが可能。
今回,研究グループは,標的に結合する抗体(モノクローナル抗体)と近赤外光に反応するプローブ(光反応性プローブ)が結合した光免疫抗体を用いることにより多種多様な細胞や微生物を光免疫療法の対象とする手法を確立した。
研究グループは,既存の治療法では制御が困難だったがんや多剤耐性・新興病原体などに対する新たな治療法への展開,また試料中の特定の細胞や病原体のみを除去するバイオツールとしての活用などが期待されるとしている。