神大ら,透明な原子一層分の膜を光学顕微鏡で観察

神戸大学と物質・材料研究機構(NIMS)は,厚さ0.3nmの透明な膜を一般的な光学顕微鏡で観察するための基板を開発した(ニュースリリース)。

グラフェンなどの層状物質は1層のシートにまで極限に薄くすることができるが,剥離の過程でサイズが非常に小さくなる上,1層のシートになるのはごく一部なので,厚さと大きさの異なる様々な小さなシートの中から目的の薄いシートを探出す作業が必要となる。この選定には従来,熱酸化膜付きのシリコン基板を利用した光学的な観察法が広く用いられてきた。

酸化膜内で起こる干渉法効果により,薄い膜も明確に顕微鏡で観察することができる。多くの層状材料は可視光で光を吸収する特徴があり,この手法により1層のシートが観察できる。しかし,光を吸収しない一部の透明な層状材料に対しては,この方法では不十分だった。

材料に光を吸収する性質があることは,その材料に色があるということ。六方晶窒化ホウ素(hBN)は白いグラフェンとも言われ,グラフェンと同じハチの巣状の結晶構造をしている。工学的に高い利用価値が見い出されていて,層状物質の研究では極めて重要な材料。

しかし,透明な材料で1層分の厚さは原子1つ分の厚さに対応する約0.3nmしかないため,1層のシートを認識することが大変難しく,層数が明確に判断できないまま利用されているという問題があった。

今回研究グループは,現状で一般的に用いられている光学的な手法を改良することで,問題を解決した。開発した手法は薄いシートを乗せる基板に着目し,緻密に光学設計された多層基板を使用する。

この多層基板はある特定の波長で反射率がほぼゼロになるように光学設計されている。無反射となる波長の領域では試料の厚さに対する反射率の変化が大きく,高い感度で薄い膜を検知し,可視化することができる。さらに,その反射率の変化はシートの層数に伴って大きくなるので,層数決定も可能。

研究グループは,市販の窒化シリコン膜付きシリコン基板に,SiO2薄膜を蒸着した基板を作製し,その上に薄いhBNを置いた。

それを商用のデジタルカメラを取り付けた一般的な光学顕微鏡で観察して,厚さ0.3nmの透明なシートの認識と層数決定が可能であることを明らかにした。観察では特に画像処理等を行なう必要もないために,薄いシートを探しだす手法として大変効果的であることがを確認した。

研究グループは,今後,一般的な試料における原子レベルの表面の凹凸や化学的な変化を簡便に観察するための汎用的な手法として,多様な研究分野へ応用されるとしている。

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