筑波大,光と冷気で冷たい温度感覚VRを実現

筑波大学の研究グループは,素早い温度変化を感じやすいという人間が温度を感じる仕組みを活用し,皮膚の温度変化をほぼゼロに保ちつつ,温度感覚を連続的に感じさせる非接触型冷覚提示技術を開発した(ニュースリリース)。

近年,ヘッドマウントディスプレー(HMD)の普及に伴い,バーチャルリアリティー(VR)の体験が容易になった。⼀⽅,より現実に近いVR体験を実現するために,HMDによる視覚情報だけでなく,他の感覚情報の提⽰への要望が⾼まっている。

その中で,温度感覚は,周囲の環境を認識するための重要な要素として注⽬されている。私たちは,⽪膚に⽣じる⾝体の状態の変化から,温度感覚を認識する。

しかし,⼈は同じ刺激を受け続けると慣れてしまい,新しい刺激を感じにくくなる。そのため,仮想空間の場⾯を切り替えた際に,適切な温度感覚が得られないなどの⽀障が⽣じる。また,その対策として,⽪膚に過度な加熱や冷却の刺激を与えることは,健康⾯でも望ましくない。

研究グループは,これまでに,ボルテックス効果(チューブの中で気体を低温と高温に分離させる現象)を応⽤した⾮接触冷覚提⽰技術を世界に先駆けて構築している。今回,これらの知⾒に基づき,新たな⾮接触型冷覚提⽰技術の開発に取り組んだ。

⼈間は素早い温度変化を感じやすいという特徴がある。この研究では,この仕組みを活⽤し,⽪膚の温度変化をほぼゼロに保ちつつ,温度感覚を連続的に⽣じる⾮接触型冷覚提⽰技術を開発した。

この技術では,冷たい気流と温かい光源を使⽤し,素早い冷刺激と緩やかな温刺激の切り替えを繰り返すことで,⽪膚の温度変化を⽣じずに冷覚を引き起こす。

⼈を対象とした実験では,異なる強度の冷刺激と温刺激の組み合わせを提⽰し,実験参加者が感じた温度感覚を記録した。その結果,実質的な⽪膚の温度変化を伴わずに,⾮接触で連続的に冷感を⽣じさせることができると⽰された。

また,⽣じる冷感の強さは,冷刺激の素早さを1.5倍(秒間0.24℃の速さの温度変化)にすることで,実質的に⽪膚温度を変化させていないにも関わらず,⽪膚温度を継続的に低下させる従来技術(秒間0.16℃の速さの温度変化)と同程度の冷感の強さを実現可能であることが⽰された。

研究グループは,メタバースをはじめとするVR世界において,急激な燃焼や突然の冷⾵などの瞬間的な温度感覚だけでなく,⻑時間にわたる連続的な温度感覚の体験を可能とし,オーロラ観光のような,実際に⾏くことが難しい旅先の雰囲気を味わうことなどへの応⽤が期待される成果だとしている。

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