日本電信電話(NTT)とNECは,IOWN Global Forumにてアーキテクチャの制定が進んでいるAPNを活用した光波長パス設計技術を確立し,伊トリノ工科大学,米コロンビア大学,米デューク大学,英ダブリン大学と共同でフィールド実証を行なった(ニュースリリース)。
これまで都市部に集中していたデータセンタは,電力やインフラスペースが豊富で災害リスクを分散できる郊外への移転が進んでおり,遠隔地を高速・低遅延に接続する光波長パスの必要性が高まっている。
しかし,従来のデータセンタ間通信(DCI)は一対一のシンプルなトポロジーで,かつ単一ベンダ・単一伝送モードで装置を構成するのが一般的であるため,規模拡張性に乏しかった。
そこでNTTとNECは,都市部に分散している多数のデータセンタ間を光ファイバーで直接接続するデータセンタエクスチェンジ(DCX)のサービスの検証を行なってきた。
DCXはDCIとは異なり,ユーザアクセス区間・キャリア区間にまたがって複数ベンダの装置を制御し,リンクの光信号品質に適した様々な伝送モードでオンデマンドに光波長パスを設定する必要がある。
オンデマンドにエンド・ツー・エンドの光波長パス接続を提供するには,ファイバー伝搬や光アンプ・光伝送装置・光スイッチのノイズによる光信号品質の劣化を短時間で算出する必要がある。
NTTはDCXが対象とする短距離区間にも適用可能な光信号品質の計算アルゴリズムを確立するとともに,複数のユーザアクセス区間・キャリア区間にまたがる場合や多種多様なWDMトランシーバを利用した場合でも,最小限のプローブ光を通すだけでオンデマンドにエンド・ツー・エンドの光波長パスを設計・設定可能な手法を提案した。
さらにNTTは、これを実現するためのユーザ拠点端末と通信事業者機器が連携・協調するアーキテクチャ及びコントロールプレーンのプロトコルを考案した。NECは,NTTが考案したオンデマンド光波長パス設定手法をinuxベースのオープンプラットフォームを活用して実装した。
これらを用いて米学術網「COSMOSテストベッド」にDCXを模擬した実験系を構築し,短距離と長距離のルートについて光信号品質の計算結果をもとに適切な光伝送装置の伝送モードを設定し,約6分で光波長パスの設計・設定が自動的に完了することと,この方式をDCXサービスに適用した場合の誤差が十分小さいことを確認した。
両社はIOWN Global Forumにおける機能アーキテクチャへの反映と他団体への普及・標準化活動を通じてAPNの普及・商用実装を推進していくとしている。