大阪公立大学,国立天文台,千葉工業大学,法政大学は,ハワイのマウナケア山頂域に設置されたすばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラが,空気シャワーを非常に高い位置分解能で可視化できていることを発見した(ニュースリリース)。
宇宙空間には高エネルギーの放射線が存在し,地球に絶えず降り注いでいる。この放射線は宇宙線と呼ばれ,1912年の発見から1世紀以上にわたって観測的研究が進められている。
この宇宙線のうち非常に高いエネルギーを持った宇宙線は,地球大気に入射すると大量の電子や陽電子,ミューオンなどからなる高エネルギー粒子群空気シャワーとなって地表に到来することが知られている。
すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラは,独自開発した100枚を超える大型(6cm×3cm)の撮像素子 ChargeCoupled Device(CCD)からなり, 2013年から宇宙の星や銀河の観測を続けている。
すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラで撮影された画像には,CCDを宇宙線が貫通することで生じる飛跡が1枚の撮影あたり常に約2万個の頻度で映り込んでいた。宇宙線による飛跡は,星や銀河を観測する天体観測においてノイズとなるため,データ処理によってこれまで除去されていた。
今回,2014年から2020年まで撮影された写真に映り込んだ宇宙線の飛跡を詳しく再解析したところ,撮影枚数約17,000枚のうち,通常の飛跡数を大きく逸脱する空気シャワーの粒子群を13枚撮影できていたことを発見した。
撮影された画像は,非常に高い位置分解能で撮影できていた。また,検出された空気シャワーの飛跡は同じ方向を向いていることから,ひとつの非常に高いエネルギーの宇宙線から生成されたものであることが明らかになった。
今回得られたCCDによる空気シャワーの検出信号の中には,暗黒物質(ダークマター)から生成された信号が含まれている可能性も示唆される。加えて,研究グループは,飛跡を高精細に捉えることを応用することによって,物質優勢の宇宙となった手掛かりが見つかることも期待されるとしている。