島根大学,情報通信研究機構(NICT),電気通信大学は,生体の視覚機能を模倣した撮像技術(視覚センサー)を開発した(ニュースリリース)。
研究グループは,バイオ材料を用いた,視覚センサーなどの視覚情報デバイス(素子)の構築に関する研究開発を行なってきたが,これまで生体材料でセンサーのようなデバイスを作る場合には大きな問題があった。
生体材料は一般に熱や薬品,乾燥などに弱いため,例えば半導体の製造技術には適合しない。視覚センサーの作製には様々な形状を造り出す必要があるため,生体材料に適した温和な条件で自在にパターニングする技術が必要だった。
研究グループは,まずインクジェット技術によって,温和な条件で光受容膜タンパク質「バクテリオロドプシン(bR)」を自在にパターニングする方法を開発し,問題を解決した。次に,この手法を用いて,視覚機能を模倣した2種の視覚センサーDOGフィルタとGaborフィルタを作製した。
これらは通常のカメラと異なり,DOGフィルタは物体の輪郭を認識する機能が,Gaborフィルタは物体の動きや方向を認識する機能が備わっており,一般のカメラとは見える画像が異なる。
Gaborフィルタでは,試行実験として,生の文字を読み取らせたところ,縦の線分のみを認識した画像が得られた。この特定方向の線分のみを抽出する特徴を活かして,生産現場での不良品の検出などへの応用が期待されるという。
今回の視覚センサーは外部電源が不要である点も特長。研究グループは,省エネルギーな印刷技術で作製でき,培養で生産できる生体材料を利用した点も相まって,持続可能な開発目標(SDGs)にも合致した,低環境負荷なセンサー技術として,自動運転車やドローンのカメラに代わるセンサー技術として今後の発展が期待されるとしている。