徳島大ら,デュアル光コムでコロナウイルスを検出

徳島大学と高知工科大学は,デュアル光コムを用いたバイオセンシングに成功した(ニュースリリース)。

バイオセンサーのうち,特に測定対象分子と分子識別部の相互作用を光学的に読み出す光バイオセンサーは,高い定量性や簡易・迅速計測が特徴だが,新型コロナウイルスやがん細胞の超早検出を実現するためには感度が不十分だった。

研究グループは,この課題を解決するため,次世代レーザーとして注目されている光周波数コム(光コム)を光源としてではなくセンサーとして用いることにより,世界で初めてバイオセンシングに応用した。

今回の研究では,光コムにファイバーバイオセンサーを組み込むことにより,サンプル濃度依存性の光周波数シフトを電気周波数シフトに変換した。電気周波数信号は,最高精度の国家基準が整備され,高性能・低価格な計測機器も充実しているので,高精度・高速・簡便な計測が可能。

「光コムの光/電気周波数変換」と「高精度な電気周波数計測」を上手く組み合わせることで,光の高感度センシング性を有しながら、取り扱いが容易で高精度な電気周波数読み出し型の光バイオセンシング(バイオセンシング光コム)が可能になる。

しかしバイオセンシング光コムはセンサー信号の温度ドリフトの問題があるため,研究グループは,アクティブ・ダミー温度補償を用いた。

この手法では,性能が同じファイバー光コム共振器をペアで準備し(デュアル光コム配置),一方にサンプル濃度変化と温度変化の両方に反応するアクティブ・センサーを組み込み(アクティブ・センシング・光コム),他方に温度変化のみに反応するダミー・センサーを組み込んで(ダミー・センシング・光コム),両センサーを同一のサンプルセルに配置する。

この場合,アクティブ・センサーのみがサンプル濃度変化に対して感度を持つのに対し,温度ドリフトの影響は両センサーに同様な振る舞いとして現れる。

従って,アクティブ・センシング・光コムとダミー・センシング・光コムの差分信号を計測することにより,温度ドリフトの影響を相殺し,サンプル濃度依存性信号のみを抽出することが可能になる。

今回は,リン酸緩衝生理食塩水中の新型コロナウイルスNたんぱく質抗原濃度を10分刻みでステップ状に変化させながら計測を行なったところ,10分の測定時間で,検出限界のモル濃度が37aMであることを確認した。

研究グループは,この手法により,新型コロナウイルスのような新興・再興感染症ウイルスのみならず,がんを始めとした健康バイオマーカー,健康被害に繋がる食品や環境の汚染物質などの超早期検出が期待されるとしている。

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