東大ら,新規n型有機半導体を開発

東京大学,筑波大学,北里大学,理化学研究所は,電子伝導性と大面積塗布をあわせ持つ新たな電子輸送性(n型)有機半導体の開発に成功した(ニュースリリース)。

弱くて可逆的な分子間力によりパイ電子系分子が結びついた固体である有機半導体では,塗布法により数分子層厚の単結晶を大面積に製膜する技術が飛躍的に進んでおり,単結晶薄膜を用いた高性能な有機電界効果トランジスタ(OFET)への応用が研究されている。

しかしながら,このような製膜技術に適した有機半導体は正孔輸送性(p型)材料であり,これまでn型有機半導体では実現していなかった。

今回,研究グループは,以前に報告した高性能なn型有機半導体PhC2−BQQDIに着目し,異なる置換基を持つ非対称な分子を合成するため,フェネチル基とアルキル基を逐次的に導入する新規合成法を考案した。

この手法により,フェネチル基および長さの異なるアルキル基を導入して結晶構造解析をおこなったところ,炭素数5を持つPhC2−BQQDI−C5において興味深い結果が得られたという。

アルキル基はさまざまなコンホメーションを取り得るが,この場合では,炭素数5のアルキル基は対岸のフェネチル基の一部を模倣したコンホメーションとなることがわかった。

すなわち,結晶中で,PhC2−BQQDI−C5分子はPhC2−BQQDIを分子模倣した形で存在しており,そのため,結晶構造全体でよく似た規則構造を形成することが明らかになった。これは,フェネチル基と同程度の長さを持つアルキル基を導入することで発見された現象。

さらに,溶解性の向上に加え,規則正しい結晶構造を実現できたことで,PhC2−BQQDI−C5を用いることで塗布法による大面積単結晶の製膜が可能となった。現在のところ,数mmからcm級の大きさを持つ単結晶を製膜することに成功しており,OFETを作製し評価することで,大気下で1cm2V-1s-1を超える移動度を観測した。

さらに,柔軟なアルキル基を導入したにも関わらず,PhC2−BQQDI−C5から成るOFETはPhC2−BQQDIと同様に優れた大気安定性や熱ストレス耐性をも示したことから,分子模倣を上手く取り入れることで,本来柔軟なものを堅牢にすることが可能であり,実用性に優れた有機半導体材料に有用であることを明らかにした。

研究グループはこの成果により,プリンテッドエレクトロニクスと大面積エレクトロニクスとを結ぶ有機半導体材料の開発を加速することで,安価で環境に優しいハイエンドデバイスの開発や,未利用エネルギーを有効活用するエネルギーハーベストなどへの展開が期待できるとしている。

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