東京都市大学は,エネルギー変換効率が30%に迫る,曲げられる「ペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池」の作製技術を開発した(ニュースリリース)。
近年,変換効率の向上に向け,異なる種類の太陽電池を重ね合わせて発電する「タンデム型太陽電池」の開発が世界的に加速しており,ペロブスカイトとシリコン型の組み合わせでは,30%以上の変換効率が達成されている。
一方,通常この組み合わせでは,ボトムセルに200μm程度の厚さがあるシリコンウエハーを用いるため,ペロブスカイトの特徴である薄くて曲がるという特性(フレキシブル性)が活かされないことが課題となってきた。
研究グループが今回開発した作製技術は,ボトムセルであるシリコンヘテロ接合太陽電池のシリコンウエハー厚を83μm程度まで薄くするもの。トップ側のペロブスカイト太陽電池は厚さ1μm程度なので,「ペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池」にフレキシブル性を付加するとともに,軽量化も達成し,従来の太陽電池では設置困難だった場所への設置を可能にする。
また,エネルギー変換効率の面でもセル面積1cm2において26.5%を達成し,従来のペロブスカイト太陽電池以上の高効率化を実現した。研究グループは,界面パッシベーションの改善や,両面受光構造の導入により更なる効率向上が見込めるとし,最終的には35%以上の高効率を目指している 。
この研究における技術的ポイントは,①表面ミラー/裏面テクスチャ構造を有する薄いシリコン基板を作製するプロセスの確立。②そのシリコン基板のミラー表面に光閉じ込めのための比較的サイズが小さい凹凸を形成し,高性能なボトムセルを作製。③そのボトムセルにおける表面凹凸の上にペロブスカイト太陽電池の特徴の一つである塗布。といった簡便な工程により綺麗にペロブスカイト層を堆積することが挙げられるという。
研究グループは,軽量・フレキシブルな高効率太陽電池は,重量的制約から設置できない工場などの屋根や,湾曲のある屋根やビル壁面など従来の太陽電池では設置が困難だった場所に設置が可能であり,特に,用地の確保が難しい都市部での展開を期待するとしている。また,電気自動車(EV)などの移動体や飛行体など新市場への展開もされるとしている。