東北大ら,レーザー加熱で分子動画撮影の反応を開始

著者: 梅村 舞香

東北大学と米カリフォルニア大学は,近赤外線レーザーによって温度を急激に上昇させる方法を組み合わせた,新たな分子動画解析法を開発した(ニュースリリース)。

タンパク質の機能を詳細に理解するには,その動きや変化を明らかにする必要があるが,これまでタンパク質分子が素早く変化する過程を原子レベルで可視化することは困難だった。

X線自由電子レーザー(XFEL)により,数10fsという高い時間分解能且つ原子分解能でタンパク質の構造変化を“分子動画”として観察できるが,結晶内の分子を一斉に反応開始させる必要があるため,光による反応開始が行なわれてきた。

しかし,この方法は,光で反応を起こす試料にしか適用できない。そこで研究グループは,急激な温度上昇(温度ジャンプ)を新たな反応開始法とすることを試みた。

温度を急激に上昇させるために,近赤外線ナノ秒レーザーによる水分子の振動励起による加熱を利用した。また,構造変化を観察する方法として,シリアルフェムト秒結晶構造解析(SFX)の手法を用い,XFEL施設SACLAにて実験を行なった。

試料には,酵素の一種であるリゾチーム結晶を用いた。近赤外線ナノ秒レーザーをリゾチーム結晶に照射し,一定の時間後(20ns,20μs,200μs後)に,今度はXFELを照射してそれぞれの回折像を得た。

そして,各時間において収集した実験データを元にリゾチームの立体構造を決定し,時間経過の順に並べることで構造変化を動画として捉えた。リゾチーム結晶は,基質などを何も含まない状態と阻害剤を含む状態の二種類を用いて,それぞれ測定を行なった。

この酵素は,阻害剤がない時には基質が結合する部分が開いた構造を示し,阻害剤が結合すると結合する部分が閉じた構造を示す。

実験の結果,阻害剤を含まない酵素の場合は,速い時間スケールにて,アミノ酸残基の側鎖の動きなどの小さな動きがみられ,遅い時間スケールでは,開閉に関係する部分で,よりスケールの大きな構造変化が観察された。一方,阻害剤を含む時には,どの時間スケールでも小さな動きしか観測されず,大きな構造変化はみられなかった。

これらの結果から,タンパク質の機能に関係する,稼働しやすい部分は熱によって,構造変化を引き起こされることや,大きな構造変化を起こすにはより長い時間が必要であることが明らかとなった。

研究グループは今後,酵素反応における中間体の可視化など,今まであまり捉えられてこなかったタンパク質の動きや反応の観察が可能になるほか,そうした測定データを基に有用酵素の改変などタンパク質分子の合理的な設計への応用も期待されるとしている。

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