東北大学らは,屋根上太陽光発電と電気自動車(EV)を蓄電池として活用する「SolarEV シティー構想」で,都市の脱炭素化にどの程度貢献できるか試算した(ニュースリリース)。
研究グループは,これまで屋根上太陽光発電(PV)とEVの蓄電池を活用することで,都市の脱炭素化に大きな効果があることを研究で明らかにしてきた(SolarEV シティー構想)。
これまでの研究では,日本の都市,韓国の都市,中国・深圳,インドネシア・ジャカルタ,タイ・バンコクの分析を行ない,屋根上PVとEVを蓄電池として活用することで大幅な都市の脱炭素化に繋がり,エネルギーコストの削減にもつながることがわかった。
今回の研究では,パリ協定の採択に重要な舞台となったフランス・パリの分析をフランスの研究所と行なった。パリは,高緯度地域(北緯48.9度)に位置しているため,太陽光発電の季節変動が大きいこと,また,冬季のエネルギー需要が高いといった太陽光発電にはマイナスの要因がある。
分析には技術経済性分析を用い,2019年をベース年とし系統電力と内燃機関乗用車と比較して,屋根上PVとEVを蓄電池として活用した際の,電力自給率,CO2排出削減率等を1時間毎に求めた。
屋根面積は都市全体の70%の活用を最大値として,乗用車はすべてEVに置き換えたと仮定し,EVのバッテリーの半分をPVの蓄電池として分析を行なった。また,パリとともに周辺地域のイル・ド・フランスの分析を行なった。
パリは,高度に都市化された地域であるため屋根上PVによって供給できる電力は30%程度に限られる。そして,PV発電の多くが,都市内で直接消費されるためEVを蓄電池として活用しても,その効果は限定的。
しかし,住宅など低層建物の多いイル・ド・フランスでは,屋根上PVによって,2019年の年間電力需要の78%程度の発電量を確保することが可能だとわかった。
そして,EVを蓄電池として活用することで,需給バランスとEVの電力需要を考慮しても60%程度の電力を供給することができることがわかった。
経済性を最大化した場合,2030年のコスト見積もりで23%のエネルギーコストの削減に繋がる。つまり,屋根上PVとEVを活用してパリの脱炭素化を行なうためには周辺地域を含めて構築する必要がある。
研究グループは,今後,コストの低減が予想されるPVやEVを活用することで,安価でCO2排出がなく供給調整の可能な電力供給を増やすことができれば,CO2排出機器や活動のさらなる電化につながり,脱炭素化をより推進させることが可能になるとしている。