東工大,フェロセン殻を持つナノカプセルを構築

東京工業大学の研究グループは,サンドイッチ型分子「フェロセン」の殻を持つナノカプセルの新構築法を開発し,平面状分子や球状分子の簡便な内包に成功した(ニュースリリース)。

フェロセンは鉄イオンを有機分子で挟んだサンドイッチ型の有機金属化合物で,高い酸化還元反応性から機能性電子材料の骨格として注目されている。フェロセンを精密に集合させることで,新たな電子機能や空間機能が期待されるものの,そのような高集合化した構造の合理的な構築手法は未開拓であった。

研究グループは,新たにフェロセンを持つ湾曲型の両親媒性分子を設計・合成した。この分子が水中で瞬時に集合することで,高密度なフェロセンの殻を持つナノカプセルの形成に初成功した。また,このカプセルの内部空間は,水中で平面状分子や球状分子を効率良く取り込むことできる。

特に電子不足な分子であるクロラニル(Chl)を内包することで,カプセルとの効果的な電荷移動相互作用に基づく近赤外吸収帯(650~1,350nm)を示した。

この吸収帯は,内包によって誘起される特異的な現象。量子化学計算から,この現象は,ナノカプセルのフェロセン骨格とChlが空間内で近接し,電荷移動相互作用が効率的に働くことに由来することが判明した。

カプセルは電子の授受で,その構造の分散と集合を制御することが可能であり,内包分子の放出とともに近赤外吸収帯の解除にも成功した。

研究グループは,今後は,この手法を応用して,様々な外部刺激に応答可能なナノカプセルの開発を進めるとともに,分子内包で現れる新たな現象を解き明かしていきたいとしている。

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