東北大,ケイ素系ディラック物質の理論設計に成功

東北大学の研究グループは,スーパーコンピューターを使った第一原理計算により,シリセンにアルカリ土類金属のベリリウムを結合させることで平面化したケイ素系ディラック物質の設計に成功した(ニュースリリース)。

ディラック物質は,ディラック方程式に従う電子を持つ物質。ディラック物質では,運動量に対してエネルギーをプロットした電子バンド構造に,2つのディラック錐と呼ばれる円錐がディラック点と呼ばれる1点で連結した特徴的な形を持つ。

この電子構造のために,ディラック物質中の電子は,巨大な加速器で加速することなく光速に近い速度で運動している。

ケイ素は周期律表で炭素と同じ14族元素のため,類似の性質を持つと予想される。しかし,二重結合,三重結合,芳香族環のような不飽和化合物については,炭素とは異なる構造と性質を示す。これが,安定で平面構造のグラフェンと,凹凸構造のために大気中で酸化分解する不安定なグラフェンのケイ素版「シリセン」との大きな違いをもたらしている。

シリセンが銀の基板上で最初に作製されてから,安定な平面構造の二次元ケイ素材料の開発が理論実験双方で精力的に進められてきたが成功には至っていなかった。

研究グループは,第一原理計算により,安定な平面構造のケイ素系ディラック物質(BeSi2)を世界で初めて理論設計することに成功した。設計されたBeSi2は,ひし形の単位胞にベリリウムテトラニトリドと同じ電子数をもち,グラフェンのハニカム構造に似た六角形の構造を形成している。

得られた平面構造の二次元結晶は,いかなる運動量でもポテンシャルエネルギー曲面の安定点にあり,安定に存在できる。弾性率テンソルはBorn-Huangの基準を満たし,機械的作用による衝撃に対しても安定。電子バンド構造は,等方性であるグラフェンなど他の多くの二次元物質と異なり,異方性ディラック物質であることを示している。

構造を詳しく見ると,BeSi2はケイ素一次元鎖がベリリウムで架橋された形をしており,鎖方向と鎖に垂直な方向での違いが異方性を生み出している。ケイ素鎖方向の電子のフェルミ速度は鎖に垂直な方向の速度より速く,一方,ヤング率からは,ケイ素鎖方向が鎖に垂直な方向よりも柔らかいことがわかった。

このケイ素一次元鎖は,炭素の単結合と二重結合が交互に重合したポリアセチレンのケイ素類縁体ポリシリンだが,ケイ素結合長に長短がなく,電気伝導を担う電子は,一次元鎖全体わたって非局在化していることがわかった。

研究グループはこの成果が,ケイ素系ディラック物質の実用化に拍車をかけるものだとしている。

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