富山大,蛍光色素を分子レベルで封止する新手法確立

富山大学の研究グループは,有機蛍光色素の発光効率,水溶性,安定性を向上させる分子封止法を確立した(ニュースリリース)。

有機蛍光色素は,有機ELのような工学材料から腫瘍組織を検出するような医学分野ツールまで,幅広い分野で利用されている。

しかし,有機蛍光色素の多くは水中や固体状態で凝集しやすく,発光効率が低下することが知られている。また,長時間の使用により色素が酸化され,発光特性を失いやすい性質も度々問題になる。

研究グループは,有機蛍光色素の欠点を解消する方法として,環状オリゴ糖(シクロデキストリン)で蛍光色素を分子レベルで封止する新しい手法を確立した。環状オリゴ糖は防弾ガラスのような役割を果たし,封止された蛍光色素は水中や固体状態で高い発光効率と安定性を示すことができる。

今回確立した合成法では,蛍光色素と二種類の大環状分子,ストッパー分子を水中で混合するだけで,すべての成分が自発的に集合して封止が完了する。鍵となるのはククルビットウリルと呼ばれる大環状分子で,この分子がすべての成分の集合化を手助けする。

触媒を添加する必要がなく,必要な成分を水中に混ぜるだけの簡単な操作で行なえる点がこの手法のメリット。この手法は様々な蛍光色素に対して適応することが可能であり,このような汎用的な分子封止法は世界で初めての報告となるという。

有機蛍光色素の用途は年々拡大しており,この研究の分子封止法は,工学から医学にいたる幅広い分野で利用される次世代色素材料の開発に貢献できるとする。

さらにこの手法は,色素以外の分子の封止にも実用可能。例えば,研究グループは,薬を封止することで,特定の臓器や組織にだけ薬物を送達する新しい仕組みを構築できるとしている。

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