独スペクトラム・インスツルメンテーションは,超高速デジタイザカード「M5i.3321」が3D乱流モデルに採用されたと発表した(ニュースリリース)。
高層建築物を設計する際,一般的な手法として縮尺模型を用いた風洞実験が行なわれる。この実験は50年以上にわたり公認とされているが,ピーク荷重を過小評価する問題が指摘されており,安全マージンを確保するためには補正係数を適用する必要がある。
もう1つの欠点は,現実には突風や大きな風の渦が一度に様々な方向から吹くことがあるのに対し,風洞実験の風は一方向からしか吹かないという点。デンマークのVind-Vindはこれに対処すべく,自然条件下での建物への風の影響を反映させた乱流モデルを新たに開発している。
このモデル生成には,精度を高めるため,10nsパルスレーザーを用いるLIDARシステムで収集した実世界データが使用されている。
12bitの分解能を有し3.2GSamples/sの非常に高いサンプリングレートでデータ収集が可能なこの超高速デジタイザカードが,LIDARシステムによる実世界データを使用した革新的な3D乱流シミュレーションに採用された。空気中の粒子がレーザーを反射する際,ドップラー効果で生じる戻り光の変化は,このデジタイザカードを介して解析される。
FPGAプラットフォームでは膨大なデータに対する処理能力が十分でないことから,データ処理は,スペクトラムのSCAPP(Spectrum’s CUDA access for parallel processing)ドライバを採用した。
このドライバでは,16レーンのPCIeインターフェースを備えたこのデジタイザが,12.8GB/sの収集データを,PCのCPUではなくCUDAベースのグラフィックカードに直接送信する。
グラフィックカード(この場合,6,144個のコア搭載のGPUを内包するNvidia Quadro A4000)は,コア数が6~8個しかないPCのCPUに比べはるかに高速にデータを処理できる。
このコンピュータモデルに対するVind-Vindの第一の目標は,都市部上空で測定された乱流との違いを分析・評価することにある。
同社は一般的な風洞実験では都市環境や風力発電用タービン群,橋,空港などとの相互作用により生まれる複雑な風況の有益情報を得られない状況下で,この3Dモデルが非常に有用であることを証明できるとしている。