立教大,最高精度の宇宙X線画像鮮明化手法を開発

立教大学の研究グループは,宇宙X線観測衛星チャンドラの世界最高の角度分解能を最大限に活用した独自の画像再合成法(デコンボリューション法)の開発に成功した(ニュースリリース)。

チャンドラ衛星は,X線衛星の中で一番の空間分解能(0.5秒角)を誇り,様々な高エネルギー物理現象を明らかにしてきた。しかし,X線の視力に直結する集光装置(X線望遠鏡)は,光軸から離れるほど像が一点に綺麗に集光されにくくなる。

理想的な点像からのずれの度合いを,点広がり関数(PSF)と呼ぶ。PSFは光軸からの距離が遠くなるほど集光力が下がり,広がりが大きくなる。つまり,観測された画像は真の天体像そのものではなく,場所ごとに集光力の異なるレンズで見たものになる。

真の天体像を見るためには,光の到来方向によって集光性能が異なる影響を補正する必要がある。画像デコンボリューション法は,事前にシミュレーションなどで得たPSFと観測画像を照らし合わせて,数学的な処理によってPSFの影響を補正し,真の鮮明な画像を推定する方法。

天文学では,ベイズ推定を用いた反復処理により,真の鮮明な画像を推定するRichardson-Lucyデコンボリューション(RL法)がよく使われる。

デコンボリューション法を実際に適用する際,単一のPSFを用いるだけでは,チャンドラ衛星の観測画像全体に対してデコンボリューションを高精度にはできない。そこで,研究グループは既存のデコンボリューション手法にPSFの場所依存性と取り入れることで,場所ごとの像の歪みを正しく補正し,真の天体像を推定することを目指した。

研究では,RL法をベースにして,場所ごとのPSFを計算に組み込むための手法を開発した。RL法の計算方法を見直し,複数のPSFを計算過程で取り込めるように改良した。

実用上は,観測画像全体でピクセル毎にPSFを用意すると非常に計算コストがかかることがわかった。そのため,ある一定間隔毎にPSFを切り替える設計にすることで,計算の高速化にも実現した。

また,明度によって生じる切り替え部分の人工的な線の発生を抑えるために,補正方法も開発した。このようにして,チャンドラ衛星の観測画像全体でも実用的な計算時間で,位置依存性のあるPSFを用いたRL法の開発に成功した。

原理実証では,世界で初めて超新星残骸カシオペア座Aに対してPSFの空間変化を適切に扱い,観測画像全体に対してデコンボリューションを施し,従来よりも鮮明な天体像を得ることがでた。

研究グループは,X線観測の視力が良くなることで,多波長で宇宙を見る力の幅が広がる成果だとしている。

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